はじめに
この記事は基本的に電子工作を始めよう、あるいは始めたが道具に困った、という人に対しての一つの参考になるように書いてみた。ただ特に何かを参考に書いたわけではないので、ちょっと自信がない。一番確実なのはこのURLを知り合いの経験者に渡して、こんなふうに買おうかと思うんだけどなんかアドバイスある?みたいに聞いてみる使い方だと思うので、可能ならそうしてほしい。そうして渡された経験者の方は、一応一通り網羅してあると思うので、その人の興味に応じてやさしく適切なアドバイスをしてあげてほしい。
道具は設計と試作と製作と
電子工作は設計(あるいは他人の設計を借りて来てその動作をなんとなく理解)して、それを試作して動作に問題ないことを確認して、実際に使える形にはんだ付けなどの加工をして、ひとつの「完動品」を作り上げる、というのがあるべき大きな流れであり、これを完遂することで初めてまとまった量の経験値を得られるというのが個人の感想である。今回はそのサイクルが存在することを前提に、必要となる道具とそれに付随する消耗品をコストと使い勝手で大まかにまとめていくつかの目安をまとめた。
道具・消耗品一覧
メインディッシュですどうぞ。
最安プラン (¥3,820) | 最低人権プラン (¥6,170) | 一般人権プラン (¥14,914) | 富豪プラン (¥29,994) | |
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共通 | テスター | テスター | テスター | テスター |
¥600 | ¥600 | ¥1,200 | ¥2,800 | |
圧着工具 | 圧着工具 | |||
¥3,800 | ¥3,800 | |||
部品ケースすこし | 部品ケースたくさん | |||
¥330 | ¥550 | |||
試作道具 | ブレッドボード小 | ブレッドボード長 | ブレッドボード長 | ブレッドボード複数 |
¥200 | ¥300 | ¥300 | ¥900 | |
ACアダプタ(12V) | ACアダプタ(12V) | 直流安定化電源 | ||
¥700 | ¥700 | ¥7,000? | ||
DCジャック | DCジャック | |||
¥250 | ¥250 | |||
試作消耗品 | ジャンパワイヤセット | ジャンパワイヤセット | ジャンパワイヤセット | ジャンパワイヤセット |
¥180 | ¥220 | ¥220 | ¥220 | |
ジャンパピンセット | ジャンパピンセット | ジャンパピンセット | ||
¥400 | ¥400 | ¥400 | ||
はんだ付け道具 | ハンダゴテ(30W) | ハンダゴテ(30W) | ハンダゴテ(30W) | 温調はんだごて |
¥800 | ¥800 | ¥800 | ¥4,000 | |
替え小手先 | 替え小手先 | |||
¥350 | ¥520 | |||
ハンダゴテ置き | はんだごて台 | はんだごて台 | はんだごて台 | |
¥280 | ¥730 | ¥730 | ¥1,400 | |
コテ先クリーナー | コテ先クリーナー | |||
¥650 | ¥650 | |||
ニッパー | ニッパー | ニッパー | ニッパー | |
¥1,360 | ¥1,360 | ¥1,360 | ¥1,360 | |
作業版(MDF材) | 作業版(MDF材) | 作業シート | ||
¥110 | ¥110 | ¥1,500 | ||
ラジオペンチ | ラジオペンチ | |||
¥2,000 | ¥2,000 | |||
ドライバーセット | ドライバーセット | |||
¥700 | ¥700 | |||
卓上ファンとライト | ||||
¥1,000 | ||||
はんだ付け消耗品 | はんだ | はんだ | はんだ | はんだ |
¥210 | ¥210 | ¥210 | ¥210 | |
ハンダ吸取線 | ハンダ吸取線 | ハンダ吸取線 | ハンダ吸取線 | |
¥190 | ¥190 | ¥190 | ¥190 | |
ビニル線の類 | ビニル線の類 | ビニル線の類 | ||
¥300 | ¥300 | ¥300 | ||
スズメッキ線 | スズメッキ線 | |||
¥230 | ¥230 | |||
ビニールテープ | ビニールテープ | |||
¥84 | ¥84 | |||
ポリウレタン被覆線 | ||||
¥180 |
各プランの意図
- 最安プラン : これさえあればとりあえずは始めまれますよという本当の下限ライン。けどもうちょっとお金を出したほうが流石に良いですとは言っておく。
- 最低人権ライン : 不便や非効率は残るが道具面では過不足なくやりくりできますよというライン。お金のない学生などにとっての現実的なラインかも。
- 一般人権ライン : やりたいことにもよるが、これさえあればそこまで不便せずに電子工作をやっていけるというライン。お金があるならとりあえずこれくらいは揃えた方が良い。
- 富豪プラン : 電子工作始めたてとしてはだいぶいい装備なライン。お金を持て余していたり、電子工作をこの先長く続けることが確定しているくらいのモチベーションの人はこれくらい出してもいいと思う。ただ、一般人権プランで揃えて自分の興味に合わせて装備を充実させていったほうがお金のかけ方の効率的には良くなる。
道具の分類
「道具は設計と試作と製作と」ではなんか色々書いたが、最悪サイクルを回せなくても、試作だけで面白いという人もいるだろうし、最初はやっぱりはんだ付けするだけのキットから入るべきだと言う人もいるだろうから、試作と実装、あるいは共通して必要の大区分を設けてある。これもまた参考程度に。
道具についての注釈 - 共通部分
テスター
電子工作で一番必要なもの。電子工作ではこれがないと本当に何もできない。最初の内、本当に必要なモードは、
- 電圧計
- 抵抗計
- 導通チェッカー
の3つだけで、一番安い奴でも大体ついてくる。
また、テスターは色々な機能を備えているタイプがある。
- オートレンジ : 手動で計測する範囲を設定する必要が無いのでとても楽。おすすめ。
- 「ポケットテスター」 : ポケットに入る程度の大きさのものを言う。ロボコンやイベント出展など、出先でどうこうするみたいな世界線が見えてる人は、ポケットテスターが便利なのでおすすめ。
- 通信機能付き : PCやスマホにデータを転送できるもの。何かのログを取りたいなら便利かもしれないが、効果対費用的には微妙。
- 電池 : 機能ではないが、安いテスターには入手性が著しく悪い電池を必要とするものがあるが、基本的に避けたほうが良い。006Pやコンビニで買えるボタン電池などのものを選ぶのが良い。
電子工作始めたての方には、例え搭載されていたとしても絶対に電流計は使わないでほしい。電流は図る必要があまりないし、そもそも回路をぶった切らないと測れないし、どうせテスターを壊すだけである。
圧着工具
個人レベルの工作では意見の別れる話であるというのは先に注釈しておく。
ある程度電子工作をすると、抜き差ししやすいケーブルは必要になる。これをピンヘッダーやピンソケットにケーブルを直接半田付けして熱収縮チューブで処理するケースを良く見るが、個人的に気に入らない。信頼性の高いケーブルを作るのはやはり圧着に限ると思うのでそちらをおすすめする。コツを掴むための練習は必要だが、難しいわけではない。
部品ケース
確実に必要になる。が、そんな高級なものも必要ではないので、100均で買ってくれば良い。最近の個人的なイチオシはSIKIRIシリーズなので、機会があったらチェックしてみてほしい。ちなみに部品屋で売ってるやつらは便利だがそれ以上に高い。
道具についての注釈(試作部分)
ブレッドボード
半田ごてを使わずに気楽に、しかも部品を消費せず回路を組めるので試作するときに便利。ただし、これで組んだものを完成品とするにはでかくてかさばるし、不恰好で壊れやすいので不適当である。初学者はボードにのった矢鱈でかいものに憧れがちだが、明らかに小さい奴をいくつか買ってきた方が扱いが良いし便利である。
ACアダプタ・電源装置
何でも良いが、試作のために電池以外の電源があったほうが良いという話。
一番手っ取り早いのがACアダプタなはずである。DCジャックはそれからブレッドボードに配線する手段が必要だよというだけで置いてある。他の手段があるならいらない。電圧や容量も目安として適当に出しているので、用途にあったものを選んでほしい。
実験用電源装置は電圧・電流が可変なのでとても便利な一品だが、初学者が使うということを鑑みるとだいぶ富豪向けだとは思う。
最悪USB給電でもいいが、普段遣いするようなものを壊したりするとショックが大きいと思うので、専用のものを持っておいたほうが良い。
ジャンパーワイヤセット・ジャンパピンセット
どちらもブレッドボードの配線を行うために必須である。よく束で売っている安いやつは、だいぶ不良率が高いので、使う前に全部両端を軽く引っ張ったあとにテスターの導通チェッカーで使えるかどうか確認したほうが良い。
道具についての注釈(共通部分)
半田こて
特段の理由がない限り30Wのニクロム半田ごてで必要十分である。それ以上のもそれ以下のもいらない。コードレスやブーストなどもいらない。セラミック半田ごても悪くはないが、2000円出してそれを買うなら、頑張って4000円だして簡易温調付きの物を買った方がいいと思う。
小手先
最初からついているので別途買う必要は無い。が、実はこれより使い勝手のいい形状のものがあるので、お金があるならそちらに変えることをおすすめする。ちなみに、半田ごてによって小手先の根本の径がちがうので、対応してるか確認してから買った方が良い。
小手台
なにか特別なものが必要になったりすることはないが、300円の不安定なこておきだけは可能な限り避けた方が良い。
水のいらない小手先クリーナーは使用者の評判がだいぶ良いのでお金に余裕があれば購入しても良いと思う。自分は買ってきたがまだ封を解いてない。どこやったかな……。
ニッパー・ペンチ
ニッパーは100均のものを使わないでほしい。これだけはどうかかケチらないでほしい。ニッパー(というより刃物全般)は良いものを使わないと余計な力を掛けなければならず、その結果怪我や作品の破損に繋がる。安全に関わる部分なので妥協はできない。
ラジオペンチはあると便利ではあるが、電子工作自体には実はあまり必要ではない。刃物部分を使わないのであれば100均のでも良いが、ぐらつきがあったり噛み合いの悪いものはさすがによした方がいい。
作業板・シート
机を傷つけないために作業用のマットや板はあったほうが良い。が、実はそこまで高級なものを使う必要はない(扱うものが高級なら話は別)。100均で適当な大きさのMDF材を買ってくるのが手っ取り早い。なければ最悪段ボールでもいいが、さすがにお勧めしない。
ドライバーセット
いくつかの組になってるドライバーセットを一つ持っておくことをおすすめする。ただし100均のものは笑ってしまうほどちゃちかったのであまりおすすめしない。
卓上ファンや手元ライト
ハンダ作業するときにあると便利。なにか拡充しようとしているならば候補に入れてほしい。自分はジャンクのPCファンと100均の手元ライトをくっつけて使っている。
半田
普通の含鉛半田でよい。鉛フリー半田は、半田付け初心者が扱うには難しいので、おしゃれぶって使うと痛い目を見る。あと、100均で売っている半田は、品質が良くないのでおすすめしない。
半田すいとり線
よほど変なものでなければなんでも良い。幅が広すぎるものは半田ごての出力が必要な場合もあるので、少し細めの方が良いかもしれない。吸い取り器とどちらが良いかの議論はあるが、初学者には吸い取り線の方が分かりやすいと思う。
ビニル線の類
配線材はもちろんあったほうが良い。今回は秋月のパックを例示しているが、秋葉原に行けるのであれば、千石のどこかでフラットケーブルの切り売りをしていたはずなので、そこで20色程度のを1mと、それより多少太めの赤黒コードを1mほど買ってくるのが良いと思う。まあここらへんもやりたいことによって変わるのだが目安程度に。
スズメッキ線
あれば便利。部品の足を大切にとっておいておけば不要という人も多いが、すぐ錆びて半田づけしづらくなるので、個人的にはやめておたほうがいいと思っている。
ビニールテープ
絶縁や固定などにとにかく便利。熱収縮チューブもたしかに便利だが、ドライヤーで延々温風をあてたり、ライターで炙ったり、ハンダゴテを注意深く近づけたりする必要があるので、初学者にはビニテで十分だと思う。
ポリウレタン被覆線
初学者がいきなり使うような代物ではないが、便利な一品ではある。興味に合わせて買えば良い程度。
言い訳やその他の注釈など
ケース加工やプログラミングなどに必要な道具
例えばオーディオアンプやラジオを作ったならケースに納めて完成品とすべきだし、ロボットを作るのならガワの作成にソフトの開発により多くの道具が必要である。それらに必要な道具は、個人の興味に依存するため、今回は取り上げない。この記事がよほど好評だったら書くかも程度。
書籍
本当は電子工作を学ぶのに良い書籍が絶対必要なのだが、書店でパラパラしてきた限りではこれ!というものがなかったので、各々見つけてほしい。
お店
今回は紹介したものがイメージしやすいだろうということで、写真がたくさん載っている秋月のリンクを多く載せているが、買えるならどこでも良い。秋葉原や通販以外にもホームセンターや道具屋に売っている・・・と思う。
おわりに
どうにも色々抜けている気もするので、指摘などがあれば教えて下さい。
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(メッセージ: 初版)
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2021/08/06
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をしました。
(メッセージ: 追記(テスターの電池)/日本語の修正)
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Asi_a
さんが
2021/12/25
に
編集
をしました。
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