rily が 2026年08月29日20時30分41秒 に編集
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私が過去に設計して使っていた、ディスクリートなヘッドホンアンプの回路図を載せておこうと思います。シンプルに電流の流せるオペアンプをICを使わずに設計しました。
私が過去に設計して使っていた、ディスクリートなヘッドホンアンプの回路図を載せておこうと思います。言い換えれば、電流の流せるオペアンプをICを使わずに設計しました。
回路 = こちらが回路になります。  一段目の入力にJFETを用いており、入力にコンデンサを用いないDCアンプにしました。二段差動方式で大きなオープンループゲインを取り、三段目をフォールテッドカスコード回路にすることで出力電圧を大きく取っています。 使用したトランジスタ = 基本的なトランジスタ - 後述のQ3~Q6やU1,U3を除いて 基本的にいずれのトランジスタも、小信号用の2SC1815/2SA1015などの小信号用低雑音トランジスタを用いましょう。今回は2SC1740/2SA933(とその同等品)を用いました。 ---  特に二段目差動増幅用と三段目カレントミラー用トランジスタは、ベースエミッタ間電圧VBEが近いものを選別して使いましょう。じゃないと出力オフセット電圧を合わせるのが大変です。 またお互いのトランジスタペアを熱結合しておくとよいです。熱結合すると温度が変化してもお互いのVBEが近い値で揃うので、誤差を相殺し温度に対して安定動作できます。  三段目のカレントミラー用トランジスタも、ベースエミッタ間電圧VBEが近いものを選別して使いましょう。じゃないと出力オフセット電圧を合わせるのが大変です。 後述の励振段トランジスタQ8,Q9も上記の小信号用を使いましたが、パワーアンプとして設計したいならば1W~10Wぐらいのトランジスタを用いましょう。 一段目(入力段)JFET -  J1,J2は東芝の2SK2145BLを使いました。 ++2SK2145はVGSが選別された2つのJFETがペアで1つのチップに内蔵されているので便利です。++ ++ゲートのR27,R10は発振防止です。数kΩ台のを使いましょう。++ トランジスタ(二段目カスコード) -  このトランジスタはVcc-Vee付近の電圧がかかり、かつ1W以上のトランジスタを使ってください。 ++こちらにカスコードを用いた理由は、周波数特性の良い小信号用トランジスタを使いつつ、そのトランジスタの発熱を抑えたかったからです。++ トランジスタ(フォールテッドカスコード回路) -  Q4,Q6にが基本的に1W以上のトランジスタを用いましょう。 ++フォールテッドカスコードを用いた理由は、二段目の差動増幅器直下のカスコードにより出力電圧の最大値が下がってまい、飽和しやすくなるからです。++ テール電流 =
一段目テール電流用定電流回路
一段目差動増幅器のテール電流と定電流回路
-  Q17とQ18とR22で一段目のJFETに流すテール電流を決定しています。計算式ですが、一つのJFETに流れる電流は半分になるので $${I_{t1}=\frac{V_{BE(Q_{18})}}{2R_{22}}}$$
になります。VBEは大体0.65Vで考えるといいと思います。
++大体1mA〜3mA以下にしています。++ ==増やせばゲインが増える一方で、発熱も増えてゲート漏れ電流が増加して出力アプセット電圧が増えるので、DCアンプにしたい場合は注意です。その対策としてカスコードブートストラップ回路を挿入しています。==
二段目差動増幅器テール電流
二段目差動増幅器のテール電流
- 
一段目のテール電流とR1(R2)とR12、二段目差動増幅器のトランジスタQ1(Q2)のVBEで決まります。一つのトランジスタに流れるテール電流は半分になるので
二段目のテール電流は、一段目のテール電流とR1(R2)とR12、二段目差動増幅器のトランジスタQ1(Q2)のVBEで決まります。一つのトランジスタに流れるテール電流は半分になるので
$${I_{t2}=\frac{I_{t1}R_1-V_{BE(Q_1)}}{2R_{27}}}$$ となります。 ++大体2mA〜7mAにしています。++ ==先程と同じく、電流を増やせば発熱が増えます。その対策としてカスコード回路を挿入しています。== 三段目(フォールテッドカスコード回路)のテール電流 -  フォールテッドカスコード回路は、トランジスタQ3,Q5のコレクタ電圧を固定するだけでなく、R3,R6の電圧も同時に固定されます。この際Q3,Q6に流れる電流はR3,R6から先程のテール電流を差し引いた値です。一つのトランジスタに流れるテール電流It3は $${I_{t3}=\frac{I_2R_{11}-V_{BE(Q_4)}}{R_3}-I_{t2}}$$ です。 ++大体3mA〜8mAにしています。++ カスコード電圧 = 一段目差動増幅回路のカスコードブートストラップ回路と二段目差動増幅回路直下のカスコード回路の電圧について説明します。 一段目カスコードブートストラップ回路の電圧 -  ==この回路でJFETにかかるVDSを制限して、JFETの発熱を抑えます。== I3は0.1mAの定電流ダイオードを用いています。 カスコード電圧はI3とR4、Q10,Q11のVBEから決まるので $${V_{cas1}=V_{DS(J1)}\simeq I_3R_4-V_{BE(Q10)}}$$ また $${I_{t1}R_1>V_{cas1}>V_{DS(Q1)(sat)}}$$ で設計します。 ++大体3Vぐらいにしています。++ ++ただしVcas1を増やしすぎるとJFETの発熱量が増えていき、出力オフセット電圧が増えます。++ ++またI3が0.1mAと非常に低いため、Q10とQ11のベース電流の分でR4に流れる電流が低下してVcas1が計算値より低くなります。なのでR4は計算値より少しだけ増やすのがコツです。++ 二段目カスコード回路の電圧 -  ==このトランジスタ(Q3,Q5)は1W以上のトランジスタを用いましょう。== I2には10mAの定電流ダイオード用いています。 ++I2のダイオードは、ロスが大きいので5mAのものにしてR11を22kΩにしてもいいと思います。++ カスコード電圧はQ1,Q2の(相対)コレクタ電圧以上にする必要があります。この電圧はQ1のVceが0に近いと見ると $${V_{C2}\simeq2I_{t2}R_{12}}$$ そして カスコード電圧Vcas2は $${V_{cas2}=V_{F(D_2)}-V_{BE(Q_3)}}$$ このとき $${I_{t2}R_3>V_{cas2}> V_{C2}}$$ が成り立つようにカスコード電圧Vcas2を調整してください。今回はLEDの順方向電圧用いましたが、抵抗を用いても構いません。 ++大体Vcas2 = VC2 + 3Vぐらいで設計してます。++ ++もしVcas2が足りなければ、追加でダイオードを追加しても良いです。++ ==Vcas2を高くしすぎるとそれに比例してQ1,Q2の発熱量が高くなります。== 出力段 = 出力段用トランジスタ -  自分はTTC3710B/TTA1452Bを採用しました。アンプの出力以上のトランジスタを用いましょう。 ++この部分はスピーカーを直接駆動するトランジスタになります。またアイドリング電流も常に流れてロスが常に発生します。ですのでアンプの出力以上のトランジスタを用いましょう。++ 出力段用バイアス回路 -  Q7のVBEとR7とR8で決まります。Q7のVBEが0.65Vとして、Q7のVceがバイアス電圧Vbだとすると大体 $${V_b=V_{CE}\simeq 0.65(1+\frac{R_7}{R_8})}$$ になります。 そしてR7を可変抵抗(多回転型)にして調整しました。 ++ただし可変抵抗が故障してオープンモードになるとバイアス電圧が一気に上昇して出力段トランジスタが焼ける可能性があるので、、、R8を可変抵抗にしたほうがいいかもしれません++ 最後に**Q7を出力段トランジスタのU1あるいはU3のどちらかにボンドで熱結合して、出力段の熱暴走を防ぎましょう。** ++発熱によって出力段トランジスタのVBE低下により、アイドリング電流が増加しますが 熱結合することで、同時にQ7のVBEが低下してバイアス電圧が低下するのでアイドリング電流の増加を相殺して安定することができます。++ 出力段のアイドリング電流 -  ++アイドリング電流は出力段トランジスタが常にオン状態にさせることで、出力電圧がそのトランジスタのVBEを下回って0Vに近づいたときに、トランジスタがoffになって歪みを生じさせないための回路になります。++ 先程バイアス電圧が求まりました。この電圧から励振段トランジスタのVBEと出力段トランジスタのVBEを差し引いた電圧がR23,R24に掛かりアイドリング電流が求まります。なのでアイドリング電流Iiは $${I_i\simeq\frac{V_b-(V_{BE(Q8)}+V_{BE(Q9)}+V_{BE(U1)}+V_{BE(U3)})}{R_{23}+R_{24}}}$$ で決まります。大体Q8,Q9のVBEは小信号トランジスタを用いたとき0.6~0.7V、U1,U3に大電力向けトランジスタを用いた場合0.5~0.55Vになりました。この式から必要なVbを求めてください。 ++入力に何も入れずにR23(もしくはR24)の電圧を測り、 大体40mA〜60mAぐらいにしています。++ 出力オフセット電圧調整用可変抵抗 -  ++そのまま動作させると、部品の誤差で直流オフセット電圧が重畳し出力されてしまい、スピーカーや出力段を破壊します。この対策として一段目に可変抵抗を導入します。++ R17とR21が調整用可変抵抗となります(R17とR21で別れていますが気にしないでください)。 可変抵抗の摺動子側をVccに繋げ、残りの端子をR1,R2とQ10,Q11のコレクタ側端子に接続します。 ++今回は多回転型の500kΩを用いました。++ ==入力に何も入れずに出力電圧を測り 大体5mV以下で、できれば1mV以下にできればいいと思います。== 二段目-三段目位相補償用コンデンサ =  二段目(三段目)でトランジスタでの増幅を行う関係で、応答が遅れて位相ずれが発生します。そこでC1,C4,C15を入れて、高周波成分を帰還させて減衰させます。 ==これを入れないとCf2を入れようがなかなか発振が止まりません。Cf2を増やしてもまだ発振したり不安定ならば、このコンデンサの容量を増やしましょう。== 余談ですが、私が作って最初の頃はここを増やす発想が無くずっと不安定で、動作が安定するまでに1ヶ月かかりました。。。 増幅率(ゲイン) = 最後に古典制御論的な見方で、ゲインの説明をしておきます。 直流ゲイン - この回路は非反転増幅回路になります。Cf2が無いと仮定して周波数特性を無視したゲインは $${G=\frac{V_{out}}{V_{in}}=1+\frac{R_{f2}}{R_{f1}}}$$ ですね。基本的にこのゲインをベースに設計していきます。 交流ゲインと位相特性 - そして位相補償用のCf2がRf2に並列なので、 $${G(\omega)=1+\frac{R_{f2}}{R_{f1}(1+j\omega C_{f2}R_{f2})}}$$ となります。積分要素があるので、各周波数ωに比例してGが減衰していくことになります。
==ただしこれはトランジスタの寄生容量や配線浮遊容量などの周波数特性を無視した値になります。== ++微分要素を含まないのでプロパーなゲインですね。++ また位相余裕も求めれるように、位相差φも求めておきますね。 元の位相がθ0、目標の位相がθ1だとしたら
++今回は位相が進んだと仮定して、遅れ補償をしたいのでこのようにしました。++ ++微分要素を含まないので、プロパーなゲインになりますね。++ ==ただしこのゲインはトランジスタの寄生容量や配線浮遊容量などによる、周波数特性を無視した値になります。== ここから位相余裕が必要なときのコンデンサCf2を求めてみます。 元の位相がθ0、目標の位相がθ1だとしたら位相差Φは
$${\phi=\theta_1-\theta_0}$$
として
とします。位相を遅らせるので負値になります。
$${\phi=\arctan(-\omega C_{f2}R_{f2})}$$
つまり $${C_{f2}=-\frac{\tan(\phi)}{\omega R_{f2}}}$$
なので $${C_{f2}=-\frac{\tan(\phi)}{\omega R_{f2}}=\frac{\tan(\theta_0-\theta_1)}{\omega R_{f2}}}$$
このφから、ボード線図上で位相余裕が足りないときに必要なCf2を求めることがなんとなくわかります。