uchan が 2023年02月27日15時39分49秒 に編集
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圧着ペンチ PA シリーズをレビュー
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株式会社エンジニア製の圧着ペンチ PA-21 と PA-24 を買って使ってみました。圧着品質の参考にしてください。なお、筆者は圧着の専門家ではなく、正しい圧着が出来ている保証はありません。 ![AWG22~28をQIコネクタに圧着](https://camo.elchika.com/43406839b0d7d3a8c5a1bfde7e54c7aaf430860c/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f63333936313234302d643365342d346361652d396632662d3965396366383634616562342f36653234356131662d343434622d346461362d383933342d623362323162373632656235/ "PA-24 で AWG #22~#28 を QI コネクタに圧着してみた") 上図は左から AWG #28、#26、#24、#22 の電線を QI コネクタのコンタクトに圧着したものです。使った工具は PA-24 です。ダイス選択は後述します。 ## QI コネクタの圧着 QI コネクタの圧着には [PA-24](https://www.nejisaurus.engineer.jp/product-page/pa-24-%E7%B2%BE%E5%AF%86%E5%9C%A7%E7%9D%80%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%83%81) を使います。被覆バレルの圧着に丸型ダイスを使いたいからです。PA-24 のダイスの一部を拡大した写真を示します。 ![PA-24のダイス拡大図](https://camo.elchika.com/160c10f4b33b813b525c35a89ecb5ac2c0bff2a1/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f63333936313234302d643365342d346361652d396632662d3965396366383634616562342f63386139303765622d376430372d343837322d386532632d656334313836333161616261/) 今回の QI コネクタ圧着において、ダイスは芯線バレルに対して M 型 W1.3、被覆バレルに対して丸型 Φ1.8 を選択しました。雑な目測でダイス幅を選択したので、本当にこの幅が最適かどうかは分かりません。 ![AWG26を圧着したQIコネクタの拡大図](https://camo.elchika.com/d92713280611a7aa4654e524c7651456b2a3c3c6/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f63333936313234302d643365342d346361652d396632662d3965396366383634616562342f64376261643130642d643032322d343837382d383362352d653931353865313363663330/) 上図は QI コネクタに AWG #26 の電線を圧着した例です。PA-24 の丸型ダイスを使うことで、被覆バレルが被覆に沿うように丸まっているのが分かるでしょうか。[デジットBlog:【Tips】電子工作でよく使う『QIコネクタ』の圧着方法](http://blog.digit-parts.com/archives/51796900.html) で紹介されている「専門業者が専用機械で圧着したもの」と見比べても、遜色ない仕上がりになっているように思います。 芯線部分の圧着具合がちょっと分かりにくいので別角度の写真を示します。 ![AWG26を圧着したQIコネクタの芯線部分](https://camo.elchika.com/2af7f2975f0d35cad7c829f4f02bed48158c1d6b/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f63333936313234302d643365342d346361652d396632662d3965396366383634616562342f36373364343835622d633034632d343039322d623963362d623935613866353232306164/) 芯線バレルは、M 型ダイスにより芯線に食い込むように曲がっています。このくらい食い込んでいると、芯線だけ圧着した段階で強く引っ張っても抜けない程度の強度が出ます。先の記事には > コンタクトピンをほんの軽く引っ張る(強く引っ張るとコンタクトピンが抜けます)か、下に向けて軽く振ったときにコンタクトピンが抜け落ちなければ大丈夫です。 とありますが、流石にその程度の圧着では不良なのではないかと思います。[molex 圧着ハンドブック(産業向け)](https://docs.rs-online.com/2acb/0900766b814b09c3.pdf) には、引っ張り強度テストの規格値として、AWG #26 の場合に 3 ポンド(約 1.36 kg)で引っ張っても抜けない必要があると書かれています。 ## QI コネクタと PA-20 QI コネクタの圧着に PA-20 を使う例が散見されます。[秋月電子の QI コネクタ用コンタクト](https://akizukidenshi.com/catalog/g/gC-12160/) の商品説明には「お勧めの精密圧着ペンチ:PA-20」とありますし、[デジットBlog:【Tips】電子工作でよく使う『QIコネクタ』の圧着方法](http://blog.digit-parts.com/archives/51796900.html) でも PA-20 を使って QI コネクタを圧着しています。 しかし、PA-20 には丸型ダイスがありませんので、QI コネクタの圧着には不適と思います。[【新製品】精密圧着ペンチ/PA-24のご案内 株式会社エンジニア](https://www.ipros.jp/news/detail/102217) によると、PA-24 が発売されたのがつい最近(2022 年 10 月)ですので、それ以前の記事に登場しないのは当然ですね。今や PA-24 があるのですから、QI コネクタのために新しく買うなら PA-24 の方が良いと思います。 QI コネクタのコンタクトが特徴的なのは左右非対称の被覆バレルです。被覆に沿うように曲げると、左右のバレルが重ならずにぴたりと地続きになるのです。PA-24 以外の PA シリーズは M 型バレルしかなく、被覆バレルの圧着が上手くできません。 [オープンバレル圧着の極め | BtoPlus JP](https://btoplus.jp/archives/mastering_crimping/) に「断線を防ぐために支点をずらすという目的のために被覆は圧着します」とありました。なるほど、もし被覆を圧着せず芯線だけ圧着した状態であれば、芯線バレルの端点を支点として揺さぶられるため、断線しやすくなります。被覆が保持されることで、揺さぶりに対する支点が被覆バレルの端点に移動し、断線し辛くなるという仕組みです。 ## VH コネクタの圧着 JST VH コネクタの圧着には PA-21 を使います。[圧着工具の選定方法 | 株式会社エンジニア](https://www.nejisaurus.engineer.jp/crimping-tool-selection-method) によると PA-24 は VH コネクタに対応しておらず、PA シリーズでは唯一 PA-21 が対応しているようです(だから手持ちの PA-20 で圧着したときに失敗率が高かったのか……)。下図は VH コネクタコンタクトの中でも小さい方の SVH-21T-P1.1 に AWG #22 電線を圧着した例です。SVH-21T-P1.1 は AWG #18~#22 に対応していますので、#22 は最小径となります。 ![AWG22を圧着したSVH-21T-P1.1の拡大図](https://camo.elchika.com/12f313b5453a22cd39bcb35d48dd8a950aeaa7b9/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f63333936313234302d643365342d346361652d396632662d3965396366383634616562342f32383339613231372d363333362d343861352d623136312d646632666664383031313966/) VH コネクタコンタクトの被覆バレル部は、QI コネクタと異なり M 型ダイスで加工します。VH コネクタの被覆バレル部は、一般的なオープンバレル端子と同じく左右対称になっているからです。QI コネクタのように被覆に沿わせて曲げると、バレル同士が重なってしまうのでダメです。 M 型ダイスで加工すると、曲がったバレルの先端が被覆に突き刺さる格好となります。深すぎるとそこで断線する原因となるのでダメですし、ちょっと接するくらいだと十分に抑えられないのでダメでしょう。力加減が難しいです。純正の専用工具であれば、最後まで握りきることで正しい具合に圧着できると思いますが、PA シリーズのような汎用工具だと自分で調整しなければなりません。 ![AWG16を圧着したSVH-41T-P1.1の拡大図(正面)](https://camo.elchika.com/235f505caa7f7a42ee8cf8740725fa4976f150ea/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f63333936313234302d643365342d346361652d396632662d3965396366383634616562342f61363836646131372d353730332d343838372d613133642d303233373363383031353436/) 上図は大きい方の SVH-41T-P1.1 に AWG #16 電線を圧着した例です。SVH-41T-P1.1 は AWG #16~#20 に対応していますので、#16 は最大径となります。被覆バレルの長さがちょっと足りていない感じもしますが、実用上は問題無い気がします。むしろ、被覆バレルの先端が被覆に突き刺さり難い角度になっていて、安心感が増しているかも? ## バレルの面で被覆に接触させるには エンジニアさんが出している動画 [【100種類以上の端子を圧着可能】精密圧着ペンチ/PA-21](https://www.youtube.com/watch?v=38_UEWtpark) から、被覆バレル部の圧着の様子を切り出したのが次の図です。 ![被覆バレルがカールして面で被覆に接している](https://camo.elchika.com/e8a9a1710037ac080e0df5e76c1956730b974173/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f63333936313234302d643365342d346361652d396632662d3965396366383634616562342f33326561353466652d653138372d343363302d383736652d626230353131356665303437/) ご覧の通り、被覆バレルが大きく曲がり、被覆には側面で接しています。バレル先端が突き刺さった筆者の VH 圧着例と異なり、これなら被覆を突き破って断線する恐れがありません。筆者も PA-21 を使っているのですが、何故この差が出るのでしょう。 おそらくは、動画に登場する端子の被覆バレルがとても長いからです。目測ですが、およそ電線外径の 3 倍ほどのバレル長があるように見えます。一方で、SVH-21T-P1.1 の被覆バレルは、AWG #22 電線外径の 2 倍ほどの長さしかありません。これではバレルが円になりきる前に被覆に突き刺さるのも納得です。[PA-21 の商品説明](https://www.nejisaurus.engineer.jp/product-page/pa-21-%E7%B2%BE%E5%AF%86%E5%9C%A7%E7%9D%80%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%83%81-1)には「新設計のダイス形状により、バレルの高い端子にも対応」とあり、動画に登場するような長いバレルの端子は少数派なのかもしれません。 ## 端子工具対応表 [圧着工具の選定方法 | 株式会社エンジニア](https://www.nejisaurus.engineer.jp/crimping-tool-selection-method) ではエンジニアの PA および PAD シリーズと代表的な端子メーカーの各端子との対応が載っています。 上記の表は種類が多すぎて見づらかったので、電子工作でよく登場する端子に限定してまとめた表を [圧着ペンチPAシリーズが適合する端子](https://scrapbox.io/fab-wiki/%E5%9C%A7%E7%9D%80%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%83%81PA%E3%82%B7%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%81%8C%E9%81%A9%E5%90%88%E3%81%99%E3%82%8B%E7%AB%AF%E5%AD%90) にまとめました。 ## この記事を書いたきっかけ この記事のきっかけは雑誌 Interface 2023 年 3 月号です。P.189 に「作業部屋♥ツール自慢 第 8 回 作業性がバツグンによい精密圧着ペンチ」という記事があり、それに触発されました。この記事を読んだとき、筆者はたまたま QI と VH の圧着不良に悩んでおり、記事内容が刺さりました。 Interface の記事を読んで何日か経った後、ふとしたことで実は伊藤さん(記事の著者)と私は知り合いだったと思い当たり、伊藤さんに連絡しました。PA シリーズの精度の良さなどについてお話を聞きました。なんと伊藤さんは PA-24 を持っているが、まだ使ったことがないということで、さっそくこの記事を書こうと思ったのでした。