kashiken が 2021年02月28日23時07分26秒 に編集
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自宅でノートPCを使用する際、机の上に直置きしていると机との間に熱がたまり本体のファンが激しく回るため、ファン付きのノートPCクーラーを使用しています。 このノートPCクーラーは最弱設定では冷却が十分ではなく、一方で最強設定にすると少々うるさかったので、表面温度を監視して自動でファンの速度を調整する機能を付けました。 ## 使用したノートPCクーラーとその構造 使用したノートPCクーラーは、Windpalの[DeepCool](https://deepcool.com/product/nbcooler/2013-12/8_443.shtml)です。  2個の大きなファンを使ってノートPCを冷却する機能に加えて、3ポートのUSBハブ機能が付いています。 目隠しゴムの下に隠された6個のビスを外したところ、ファンコントローラとUSBハブを兼ねた基板が現れました。  基板のパターンを追ってみると、ファンコントローラ部分は次のような回路になっていることが分かりました。


電源スイッチを兼ねたボリュームを回すと、NPNトランジスタ 2SD882のべース電圧が変化し、ファンにかかる電圧が制御されます。 ファンを回すためには比較的大きな電流が必要になるため、ボリュームで直接電流を変化させずに2SD882で電流増幅を行っているという回路です。 この回路を外部から制御するには、図の点Aに対して制御電圧を与えれば良さそうです。 ## 温度の測定と制御方針 まずはどのように温度を制御するべきか考えるため、ノートPCクーラー表面の温度を測ってみます。 TIのアナログ温度センサ、[LM61](https://www.tij.co.jp/product/jp/LM61)をノートPCクーラーの表面に貼り付け、出力をロギングしてみました。 貼り付けには、[ハックルー](https://akizukidenshi.com/catalog/g/gT-07884/)を使用しました。  LM61は測定した温度を以下の式に基づいて電圧として出力します。 ``` Vo = (T * 10) + 600 [mV] ``` これをDMMでロギングし、温度に換算したのが以下のグラフです。  室温から測定を開始し、クーラーの上に置いたノートPCの電源を入れると、30分ほどで温度が34℃程度まで上昇しました。 測定できている温度としては34℃程度ですが、これはノートPCクーラーの表面温度を測定しているためで、この時ノートPC本体のファンは強く回っており、冷却すべき温度となっているようです。 このグラフの範囲からは外れますが、そのまま測定を続けていたところ、最大で35.5℃程度まで温度上昇が見られました。 ノートPCクーラーの電源を入れてファンを最強で回すと、温度はすぐに28℃程度まで下がりました。 よって、おおよそ34℃を超えたらファンを強くし、30℃を下回ったらファンを弱くするような制御が良さそうです。 ## 制御回路の製作と組み込み 先ほどの測定に使用したLM61に付け加える形で、コンパレータを用いた簡単な制御回路を設計しました。


LM61の出力をコンパレータ NJU7141で基準電圧と比較し、基準電圧よりも高ければFETを制御してファンコントローラの端子に1kΩを介して5Vを印可するという単純な回路です。 ファンを最強で動作させると少々うるさいため、手動ボリュームを最弱にしていた場合に、最強設定に対して丁度真ん中の設定になるように1kΩを介した電圧印可としています。 コンパレータにはショットキーバリアダイオードRB521Sと抵抗を用いて、立ち上がりに対してヒステリシスを設けています。 これにより、おおよそ * 0.94V(34℃)を超えたらファンを強くする * 0.90V(30℃)を下回ったらファンを弱くする となるようにしました。 この回路をユニバーサル基板上に組み、ノートPCクーラーの内部に取り付けました。   ## 動作確認 組み上げた回路の動作を確認したところ、おおよそ * 0.94V(34℃)を超えたらファンを強くする * 0.88V(28℃)を下回ったらファンを弱くする となっていました。 設計値より若干下に閾値がありますが、今回はありものの部品を使用したため抵抗は5%品を使用しましたし、ショットキーバリアダイオードのVfもばらつきますのでこんなものでしょう。 狙いよりもやや低めの温度でファンが制御されますが、今回の温度制御は大まかに行えれば良いので問題ありません。 実際にこのノートPCクーラーを使用する中で動作に問題があるようであれば、定数を調整しようかと思います。 ## おわりに 市販のノートPCクーラーをベースに、自動ファン調整機能を加えたノートPCクーラーを製作しました。 これでクーラーの強弱設定を気にすることなく使用できるため、便利になりました。