mtyk1t が 2020年05月18日20時40分16秒 に編集
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STAX SRM-252S の回路図
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STAX のイヤースピーカーが不調なため、原因を調べていたのですが、イヤースピーカードライバーの SRM-252S の回路図が、検索しても見つからなかったので書き起こしました。 SRM-252S は半導体式のドライバーで、STAXの据え置き型のイヤースピーカードライバーの中では最も安価なラインナップです。 SRM-252S は現在単品では販売されていません。例えば [SRS-3100](https://stax.co.jp/products/srs-3100/), [SRS-005S MK2](https://stax.co.jp/products/srs-005s-mk2/) のような、イヤースピーカーとのセットで売られています。私は別のセット品(販売終了)で購入しました。 製品仕様は以下の通りです。 > ●周波数特性:DC~35kHz/+0, -3dB > ●高調波歪率:0.01%以下/1kHz 100V r.m.s. > ●増幅度:58dB (800倍) > ●定格入力レベル:125mV/100V r.m.s.出力 > ●最大出力電圧:280V r.m.s./1kHz > ●入力インピーダンス:50kΩ > ●入力端子:RCA×1 (パラレルアウト端子) > ●バイアス電圧:DC580V > ●電源電圧:100V専用ACアダプター付属 > ●消費電力:4W > ●外形寸法:132(W)×38(H)×132(D)mm (突起部含まず) > ●重量:540g > ●生産国:日本 本体の底のゴム足(フォーム足)を剥がすと4箇所ネジが出てきて(1箇所は最初から見える)、それを外すとカバーが外せます。分解した様子はこんな感じです。  別の角度  ## 電源部分 12VのACDCアダプターから、DCDCコンバーター回路によってアンプとDCバイアス用の高圧を作り出します。 ACアダプターは今時珍しいセンターマイナスのトランス式です。 測ったところ、DCバイアスは約330V、アンプ用の両電源は約210V/-210Vでした。 製品仕様の「バイアス電圧:DC580V」というのがよくわかりませんが、最大電位差 330 - (-210) = 540V のことを言っているのかもしれません。  SG3524N というPWMインバーターICを使用しています。このICの型番で検索しても、メーカーである Texas Instruments のサイト以外はほとんど情報がありませんでしたが、1960年代に開発された電源用ICのようです。現在でも使われているものとしては TL494 と似た役割の製品で、当時はライバル的存在だったらしいです。 DCDCコンバーターでは、出力電圧をフィードバックして電圧を安定化するのが常識で、SG3524 にもそのための基準電圧源や入力端子がついています。しかし驚くべきことに、SRM-252S は電圧フィードバックを全くしていません。おそらく、負荷となるアンプ回路の消費電流が常に一定なので、安定化の必要がないという判断なのかもしれません。 ## アンプ部分 アンプ部分はもちろんステレオで、回路だけでなく部品番号まで左右同じため左側のみ書きました。  アンプは、イヤースピーカーの動作原理のため、シングル入力→バランス出力の構成になっています。 2段差動増幅で出力段は定電流駆動したエミッタフォロアです。高電圧がかかる箇所はゲート接地のカスコード接続で、耐圧を稼ぎつつミラー効果を回避する堅実な設計です。 初段のトランジスタは、TO-92パッケージのP型トランジスタのようですが、熱収縮チューブで一体になって熱結合しており、型番はわかりませんでした。もしかするとP型のJ-FETかもしれません。 電圧増幅率は (300k + 380) / 380 ≒ 790 = 58dB と公称通りです。 入力回路にDCカット用のコンデンサーを挟まないDCアンプ構成です。非常に高い電圧増幅率のため、もし入力に少しでもDCが載っていればかわいそうなことになるでしょう。