
シマシマになったVFDディスプレイを復旧してみた
はじめに
VFDには、未だにも結構メリットがありますね。色が綺麗、リフレッシュが速い、視野角に構わなくてもみやすい。
でも一つの重要なデメリットがあります。
その名は・・ 劣化
VFDの劣化の原因
一番気付きやすい劣化の例は「焼き付き」、「光体の蒸発」と「フィラメントの劣化」です。
焼き付き
例えば、先ほどの写真にあるディスプレイにずっと「電子決済できます」という文字列が表示され続けて、
10年ほどでその文字の形に点灯していたピクセルの光体の発光性が下がってしまいました。
周りのピクセルにある光体が比較的に劣化していないので、画面全体を光らせると反転した文字見たいな現象を見える。
光体が劣化してしまったので、残念ながら焼き付きを復旧することができません。
光体の蒸発
そんなによく見える現象ではないですが明るさを増やしたくてグリッドの電圧やフィラメントの電流を無理やり上がる設計の機材にみれます。焼き付きの原因のように、ずっと同じセグメントを光らせると光体が蒸発してしまいガラス面に振り付けてしまう。
これもディスプレイを分解しないと取り除きはできないので、残念ながら復旧ができません。
フィラメントの劣化
ディスプレイのセグメントがシマシマになったっぽい現象はこれです。明るさなどに関係なく、使用時間により発生してしまいます。
今回の実験体は10年ほど稼働していたので似たような現象が発生しています:
この現象は復旧可能ですが、もちろん新品同様になりません。
さらに劣化であるから時間が通ってまた発生してしまいます。一時的な復旧方法としてお考えください。
これから復旧方法を説明させていただきます。
そもそもどうしてシマシマに?
VFDの中身を一度みていきましょう。
フィラメントは、表示の妨げとならないよう極めて細いタングステンの芯線に、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)の酸化物が被覆されたもので、フィラメントサポート(固定端)とフィラメントアンカ(可動端)の間に適当な張力を持たせて取り付けられており、この両端に規定のフィラメント電圧を印加することによって陰極温度が約600℃前後となり、熱電子が放射されます。
https://www.futaba.co.jp/product/vfd から引用
熱電放出により、被覆の外層は時間の経過とともに電子が枯渇します。そしてフィラメントのアノードに最も近い側はより早く電子が枯渇します。
枯渇の対策としては、フィラメントを長期仕様の温度よりもっと加熱させていきます。
そうすると、フィラメントの真ん中に埋め込んでいる電子が速く外側に移動させて先ほどの図1の状態にもどします。
注意事項
- VFDを光らせるために高電圧が使用されています(普通は30V~100V並みです)。感電の危険がありますので、手に触る時は十分注意しましょう。
- フィラメントに仕様を超える電流を通せると破損の可能性があります。大事な機材に行わないでください。ということより、もう捨てるつもりだから壊してもいいVFDでお試しください。
- VFDはガラスなので割れる可能性があります。取り扱いに十分ご注意ください。
- 万が一、この記事に書かれてる内容を再現することは全部読者の自己責任です。
実験
今回の実験体は、双葉電子製 GP1232A02です。
とあるアーケードゲーム筐体に使用されていますので廃棄からかなり安く入手できました。が、10年間程ほぼ毎日稼働していたので劣化が酷いです。
先ずはフィラメントを制御基板から切断します。切断しないと、外部から電気を入力させたら故障の可能性があります。
VFDのピンは普通にコーバルという合金から作られていますので、曲がりやすいです。曲がりすぎて取れないようにご注意ください。
そして、電源を 0.00V / 0.1A に設定してフィラメントのピンに接続します。他の回路から切断していますので±はどうでもいい。
これからディスプレイにあるフィラメントアンカを見ながら 0.1V/秒 の速度で電圧を上げます。電源がCCに切り替わってたら電流設定を合わせてゆっくり操作します。フィラメントが光らないけどちょっと伸びてるることは目的です。
たぶん 3V 前後にこの状態に辿り着きします。
これから電源の電流と電圧設定を合わせて操作して、もっとゆっくり電圧を上がります (0.05V/秒程は適当だと思います)。最初にフィラメントは少しだけ光し始める。
この記事に記載している値は すべてのVFDに一緒との訳ではありません。単純に実験の記録です。実際にフィラメントが明るすぎじゃないのか、伸びすぎてないのかを見るしかないです。劣化によりこの時点でもうフィラメントが切れてしまう可能性もあります。
これからもっとゆっくり (0.05V/2秒ほど)、ちゃんと光るまで電圧と電流を増やします。目標は… 説明しづらいけど紅鮭に近い色といいたいです。
一応、やりすぎるより足りなかったらやり直す方がいい。フィラメントが切れたらもうVFDを捨てるしかない。今回の実験体に従って、最後の電源の設定は 7.0V / 0.25A でした。
【注意事項】 この状態のフィラメントは非常に弱くなっています。少しでもVFDを動かしたら溶けて中に落ちてしまう可能性が非常に高い。実験を終了するまで振動なども避けてください。
この色までたどり着いたら10分ほど放置します。
10分過ぎたら、0.1V/秒ほどの速度で電圧を減らします。0Vにたどり着いたらしばらく放置して、VFDのガラス面が触ると熱くはない時は終わり。
実験結果
それでは、前後の写真を見ていきましょう。
実験前
実験後
大分綺麗になりましたんですね!
終わり
一応、物理的な劣化だから引き続き酷くなってしまいます。結果はどのぐらい残るも不明です。試した内に、1個は2時間ほどでまたシマシマになってしまいました(前よりそんなに酷くはないけど)、もう1個は数日過ぎても綺麗のままです。
もちろん、制御回路を改造してフィラメントの電流を増やしたらまたいつかまで使えるけど… まぁ、結局VFDの劣化は仕方ないでしょうね。
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akasaka
さんが
2025/03/05
に
編集
をしました。
(メッセージ: 初版)
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