編集履歴一覧に戻る
dangomushi115のアイコン画像

dangomushi115 が 2021年02月28日13時04分06秒 に編集

初版

タイトルの変更

+

宝石の鑑別のための分光光度計

タグの変更

+

M5Stack

+

M5Faces

+

C12880MA

+

秋葉原2021

メイン画像の変更

メイン画像が設定されました

本文の変更

+

作ったもの(概要) ==== 宝石の種類を鑑別(判別)するための分光光度計を作りました。 ![キャプションを入力できます](https://camo.elchika.com/6a4076dfe8f41e7afc1367e6876faec5d23864c3/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f39306565613637612d376236322d346138332d616431662d346636623862643230343930/) 背景 ====  宝石の中には、一見同じ石に見える石が多々あります。例えば、「赤い石」の代表的なものとして、1月の誕生石である「ガーネット」や7月の誕生石である「ルビー」などが挙げられます。このような、見た目の似ている石であっても、一般的に石につけられる値段は全く異なります。そのため、特に高価な宝石の場合、鑑別機関に依頼して宝石の鑑別(※)を行って、宝石が偽物や別の宝石でないことを証明してもらう必要があります。 ※:ダイヤモンド以外の宝石の種類を特定してもらうことを鑑別、ダイヤモンドの品質等を特定してもらうことを鑑定といいます。  宝石の鑑別では、各種測定装置を使って、宝石の色、屈折率、比重、、、、など様々な指標により宝石の種類を特定します。しかしながら、宝石の各種指標を測定するための測定装置は、定量的な数値を出力できるものは非常に高価(数十万円~)です。また、宝石の色や屈折率など、光に関わるパラメータを簡易的に調べる機材(分光器や屈折計など)の中には比較的安価なものもありますが、定量的な数値を出力する機能がなく使用する人が肉眼で判断する必要があるなど、機材の使用に技術が要求されるものが大半です。  そこで、今回は2021/2/28現在、秋月電子通商で18000円で入手できる浜松ホトニクスの[マイクロ分光器 C12880MA](https://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-12673/)を使用して、ポータブルな分光光度計を作成することにしました。 作成した分光光度計の機能の詳細 ====  作成した分光光度計は下図の通り、左側のM5Stack Basic+M5Faces(ゲームパッドパネル)からなる操作部分と、右側のマイクロ分光器C12880MAからなる測定部に分かれています。測定部の宝石トレーに宝石を入れ、宝石の上に光源を設置して、M5StackのA/Cボタンを押すことで、光源から発され宝石を透過した光を測定することができます。 ![作成した分光光度計](https://camo.elchika.com/2830f73233d841d335af5ec9766aeb821a194472/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f62333064613230372d343237332d343933302d613461322d303535366536626339363736/)  作成した分光光度計は、2種類のスペクトルを表示できるようになっています。M5StackのAボタンを押すと参照光(光源の光)、Cボタンを押すと宝石を透過した透過光の測定を行います。画面には、常にこの参照光と透過光のスペクトルが表示されます。下図は、電球色のペンライトでアレキサンドライトを測定した時のM5Stackの画面です。画面左下に黄色い四角が表示されていますが、これが参照光(電球色のペンライト)の色を表しています(R:255、G:242、B26と、黄色っぽい光であることが分かります)。また、画面右下に表示されている赤い四角は、宝石を透過した透過光の色を表しています。画面上部のグラフは、参照光・透過光それぞれの測定値(スペクトル)をグラフで表示しています。  また、測定したスペクトルは、M5Faces(ゲームパッドパネル)のスタートボタンを押すことで、シリアル通信によりPC等に送信することも可能です。  なお、一般のご家庭では、センサの測定感度のキャリブレーション等ができないため、測定値を物理的・絶対的に解釈することは困難です。あくまでも - 特定の波長の光が含まれているのか - ある波長の光に比べ、別の波長の光が強いか/弱いか が何となくわかる、くらいの解釈をすることとなります。 ![電球色のペンライトでアレキサンドライトを測定した時の画面](https://camo.elchika.com/364b8808130ec4581afd9a46432f100db9c5b341/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f62383564313933372d663930322d343039392d626235632d353538613038343539346237/) 作成した分光光度計の使い方の例 ==== 作成した分光光度計を使って、下記に示す4種類の宝石の種類を判別してみます。 1. ガーネット(赤い石) 1. ルビー(赤い石、紫外線を当てると赤く蛍光する) 1. トルマリン(緑の石) 1. アレキサンドライト(白色LED下で緑、電球や太陽光の下で赤くなるカラーチェンジ効果を持つ石) ![キャプションを入力できます](https://camo.elchika.com/7eb190c349fa7db0e327835074c40489b086d987/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f31353930633162622d313762342d343837642d623937372d643336663961646534323366/) まず最初に、赤い石(ルビー・ガーネット)を判別してみます。これらはともに赤い石ですが、ルビーの赤い色を生む原因であるCr3+の特徴から、判別することができます。すなわち、ルビーは下記に示す2つのグラフの通り、白色LEDや紫外線LEDを当てた時、690nm付近にピークが存在するという特徴を持っています(参照光には含まれない波長の光です)。 ![キャプションを入力できます](https://camo.elchika.com/3050aa905682a363bb8f18202e6907ea52a099d7/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f36326566633237382d376135362d343937642d623634352d343265383963636139646261/) ![キャプションを入力できます](https://camo.elchika.com/f557dcb2e579b9687d4f6d3d20fca62c70c67b29/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f35666362303036342d623332332d346532642d626237342d386461626638663832363063/) 次に、白色LED下で緑色の石(トルマリン・アレキサンドライト)を判別してみます。白色LED下でトルマリンとアレキサンドライトを測定すると、下記のようなスペクトルを示します。 ![キャプションを入力できます](https://camo.elchika.com/2b1d039c7ed015cd8ad61d648d31681c2e138de8/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f66323162663762382d636133372d343063302d613266372d346639333561666333343432/) 一方、電球色のペンライトを用いてスペクトルを測定すると、以下のようになります。アレキサンドライトが650~700nmあたりの赤い光の強度が強く出ていることが分かります。このグラフ単体ではわかりづらいですが、電球色のペンライトの光を当てると、トルマリンは緑色に見えるのに対し、アレキサンドライトは赤色に見えます(今回作成した分光光度計は、測定したスペクトルから光の色を判定する機能を有しており、実際に本データを測定した際、目で見た色と同じような色が判定されていました)。以上のように、本分光光度計を使用することで、カラーチェンジ効果を定量的に測定できました。 ![キャプションを入力できます](https://camo.elchika.com/ff6c0ddaf2f95be0c11558884f4f0a14b688c167/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f33346237326134662d636661342d346265392d616238632d383735353166636334656630/) 前置きが長くなりましたが、さっそく分光光度計の作り方を説明していきたいと思います。 材料 ==== 材料は下記の通りです。オプションと記載しているM5Facesは、なくても主要な機能を実現することができます。 | 品名|参考URL|備考| |:-:|:---|:---| | M5Stack Basic | [秋月電子通商商品ページ](https://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-16008/) | 必須、Gray等も可 | | マイクロ分光器C12880MA | [秋月電子通商商品ページ](https://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-12673/) |必須 | |トランジスタ 2SC1815L-GR-T92-K| [秋月電子通商商品ページ](https://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-06477/) |必須 | | 抵抗(100Ω)×3個| | 必須 | | M5 Facesボトムベース | [マルツ商品ページ](https://www.marutsu.co.jp/pc/i/2177890/) | オプション | | M5Stack Faces用ゲームパッドパネル | [マルツ商品ページ](https://www.marutsu.co.jp/GoodsDetail.jsp?q=M5Faces%20%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%83%91%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%91%E3%83%8D%E3%83%AB&salesGoodsCode=2190004&shopNo=3) | オプション | 作り方(ハードウェア) ==== 下図の通り、マイクロ分光器C12880MAとM5Stackを接続します。なお、マイクロ分光器のケースと各ピンがショートしないよう、接続方法には注意をしましょう。 ※:お高いセンサなので、センサを壊さないよう十分に注意して接続することをお勧めします。特にセンサの扱いについてこの記事では記載していない重要事項等もありますので、**念のため、必ず**センサの[データシート](https://www.hamamatsu.com/jp/ja/product/type/C12880MA/index.html)を確認してから接続するようにしましょう。 ![](https://camo.elchika.com/ca35af7ededc8f62bfe5c84ea8a617e0b007d165/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f31393232633962362d666537642d343431312d386233652d356131353335366132356130/) 上記のような部品をプリント基板を使って実装した様子が下記の通りです。なお、上記には記載していない部品(不要な部品等)も実装されています。 ![キャプションを入力できます](https://camo.elchika.com/0aaa669203ed468f4c2ec25d2a37cd5c6cf92dcb/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f64633161373739302d356538392d343534302d626536632d316232333862303335616431/) このままだと、宝石(小さい・高価)の透過光をうまくセンサに当てることができないため、宝石を置くトレーや外装を3DCAD+3Dプリンタで作成します。参考までに、今回作成したケースの三面図を下記に示します。 ![キャプションを入力できます](https://camo.elchika.com/a88e86317e5c961d0e856fbd55326f0bdfde30cd/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f31323732363666662d666232322d343362652d616238382d396234613736346632656239/) なお、重要なのはセンサと宝石、ライトの位置関係ですので、それらの寸法等を下図で示します。 ![キャプションを入力できます](https://camo.elchika.com/10ab73a7ca8f5f121ba9b0e121c8d1e9feb55170/687474703a2f2f73746f726167652e676f6f676c65617069732e636f6d2f656c6368696b612f76312f757365722f64656562373232302d363835322d346431322d386135332d3333636537633337323032362f34613532346566362d643939622d346663652d616363332d633535666666306534316462/)