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Bluetooth

無線通信方法のひとつ。対応機器同士を1対1で接続するのが特徴。スマホとイヤホンを接続する方法として使用されることが多い。

概要

Bluetoothは近距離をつなぐ無線通信技術のひとつ。

イヤホンとスマホを接続するのによく使用されている。

IoT向けのマイコンボードには低消費電力のBluetooth LEが搭載されていることが多い。

特徴

BluetoothはWi-Fiなどと同じ無線通信規格のひとつで、対応機器同士を1対1で接続するのが特徴。

対応機器のパッケージにはBluetoothのロゴが表示されており、製品を選ぶ際はロゴの有無だけでなく、バージョンやクラス、プロファイルを確認する必要がある。

IEEEでの規格名はIEEE 802.15.1である。

名前の由来

Bluetoothという名前はノルウェーとデンマークを統合したデンマークの王様、ハーラル・ブロタン・ゴームソンの愛称、青歯王に由来する。

この名前には、乱立する無線通信規格を統合したいという願いが込められている。

Wi-Fiとの違い

Wi-FiもBluetoothも同じ無線による通信技術である。

Wi-Fiは通信速度が速く、広範囲にある複数の機器を同時に接続できるのに対して、Bluetoothは低速・短距離かつ1対1の通信を想定している。
しかしWi-Fiは一度に扱えるデータ量が大きいため消費電力が大きく、Bluetoothのほうが省エネである。

詳しくはWi-Fiのページで解説している。

赤外線通信との違い

Bluetoothと同じ短距離の通信で、赤外線通信IrDAがある。

IrDAは遮るものがあると遮断されてしまうが、Bluetoothは障害物に強いのが特徴である。

接続方法

Bluetoothで機器同士を接続するには、初回のみ設定が必要である。これを「ペアリング」と呼ぶ。
一度登録すれば、Bluetoothをオンにするだけで自動的に接続されるようになる。

また、交通IC系端末などに使用されているNFCという技術に対応している製品なら、機器同士をかざすだけでペアリングが可能。

歴史

Bluetoothはもともと、エリクソンの社内プロジェクトとして開発された技術だった。

1998年5月、エリクソン、Intel、IBM、ノキア、東芝の5社がプロモーター企業としてBluetoothという名称を発表し、Bluetooth SIGを設立。

その後プロモーター企業として、マイクロソフト、モトローラ、3COM、ルーセント・テクノロジー、Apple、ノルディック・セミコンダクターが加わった。なお3COMとルーセント・テクノロジーは脱退している。

分類

Bluetoothは、バージョン、クラス、プロファイルの3つの分類がある。

バージョンはBluetooth通信自体の性能、クラスは通信距離や最大出力、プロファイルは機能による分類で、Bluetooth対応製品のパッケージにはこれら3つの規格が全て記載されている。

バージョン

Bluetoothは、BR(Basic Rate)とEDR(Enhanced Data Rate)とLE(Low Energy)の3つに分けられる。

LEの持つ性質はBRやEDRと大きく異なるため、BRとEDRをまとめて「クラシックBluetooth」と呼ぶことがある。

Bluetooth BR

初代からVer1.2まではBluetooth BR(Basic Rate)と呼ばれる。最大通信速度は1Mbpsである。

バージョン名 変更点
Ver1.0 初代バージョン
Ver1.1 IEEEに承認される
Ver1.2 2.4GHz帯域の干渉対策追加

Bluetooth EDR

Ver2.0から3.0までをBluetooth EDRと呼ぶ。EDRの追加により最大通信速度が3Mbpsになった。

バージョン名 変更点
Ver2.0 EDRをオプションで追加
Ver2.1 NFCに対応。Sniff Subrating機能を追加
Ver3.0 PALとAMPを追加したことで転送速度が最大24Mbpsに向上
追加機能
  • EDR(Enhanced Data Rate):大きいデータを転送する際に最大速度3Mbpsの通信に切り替える
  • NFC(Near Field Communication):ペアリングを簡略化
  • Sniff Subrating:省エネ機能
  • PAL(Protocol Adaptation Layer)
  • AMP(Generic Alternate MAC/PHY)

Bluetooth HS

Ver3.0+HSはBluetooth HS(High Speed)と呼ばれる。ハイスピードという名前のとおり最大24Mbpsという高速通信が特徴である。

バージョン名 変更点
Ver3.0+HS Ver3.0にHSを追加。電力管理機能の強化により省電力性が向上
追加機能
  • HS(High Speed)

Bluetooth LE

Ver4.0以降のグループはBluetooth LEと呼ばれ、以前のバージョンより圧倒的に消費電力が少ないのが特徴である。

バージョン名 変更点
Ver4.0 BLEに対応したことで大幅省電力化。転送速度は1.0Mbps
Ver4.1 4.0を高機能化
Ver4.2 BLEにDLEを追加し通信速度2.5倍、BLEでIPv6/6LoWPANが可能に
Ver5.0 通信速度はVer4.0の2倍、通信範囲は4倍に
Ver4.1での追加事項
  • 自動再接続
  • LTEとBluetooth間の干渉対策
  • データ転送の効率化
  • 直接インターネットに接続
  • ホスト兼クライアント可能
その他の追加機能
  • DLE(Data Packet Length Extension)

クラス

クラスは通信距離によって分類されている。電波が強いほど広範囲で通信できる。

また通信する2つの機器のクラスが同じでなくても問題ない。

名称 通信距離 最大出力
Class1 約11~100 m 約2.6~100 mW
Class2 約2~10 m 約1.1~2.5 mW
Class3 ~約1 m ~約1 mW

プロファイル

Bluetoothは様々な用途で使われるため、使用用途によって属性分けして扱っている。その分類をプロファイルと呼ぶ。

Bluetoothを使用するには、同じプロファイルに対応した機器同士でなければ接続できない。

プロファイルは用途によって分類されているため、目的に合った製品を購入する必要がある。

以下、代表的なプロファイルの一覧である。

名称 主な用途
A2DP (Advanced Audio Distribution Profile) ステレオ音声をイヤホン・ヘッドホン類に伝送
AVRCP (Audio/Video Remote Control Profile) 音響機器のリモコン操作
BIP (Basic Imaging Profile) 画像を転送
BPP (Basic Print Profile) プリンタへ転送し印刷
DUN (Dial-up Networking Profile) テザリング
FTP (File Transfer Profile) パソコン間でのファイル転送
GAP (Generic Access Profile) デバイスの認識や接続、暗号化など
HCRP (Hardcopy Cable Replacement Profile) プリンタへ転送し印刷
HDP (Health Device Profile) 医療機器用
HFP (Hands-Free Profile) ハンズフリー
HID (Human Interface Device Profile) キーボードやマウスなどと接続
HSP (Headset Profile) ヘッドセットと通信
OBEX (Object Exchange) オブジェクト交換 (OPP、BIP、FTP、SYNC) で用いる認証方式
OPP (Object Push Profile) データ送受信
PAN (Personal Area Network Profile) テザリング
PBAP (Phone Book Access Profile) 電話帳のデータ転送
SDAP (Service Discovery Application Profile) 他のBluetooth機器が提供する機能を調べるためのプロファイル
SPP (Serial Port Profile) Bluetooth機器を仮想シリアルポート化するためのプロファイル
SYNC (Synchronization Profile) スマホ・パソコン間のスケジュール帳や電話帳のデータ転送と同期

問題点

プロファイルは、Bluetoothの機能をわかりやすくするための分類だったが、見てのとおり多すぎてわかりづらくなってしまっている。

例えば、プリンタに転送して印刷したいときはBPPでもHCRPでも可能である。またハンズフリー用途で使われるHFPは、ヘッドセットと通信するためのプロファイルであるHSPに通話機能を加えた上位規格である。

このように同じような機能に対応したプロファイルが複数存在し、既存プロファイルの上位規格のような新しいプロファイルが続々と登場している。これらに互換性がないため、買い替えの必要や、購入した製品が手持ちの製品のプロファイルに対応していないなどの問題が発生してしまう。

ライセンス・技適

BluetoothのロゴはBluetooth SIGの商標なので、表示させて販売するにはBluetooth SIGと契約する必要がある。

それに加えて日本で利用する場合、技術基準適合認定(技適)を受けていることが条件である。技適マークのない製品を使用すると電波法違反となる。

日本で販売されている製品はたいてい技適マークを取得しているが、海外から輸入したマイコンボードなど日本製以外の製品を購入する際は確認が必要。

課題

Bluetoothは発展している最中の通信方法である。そのため課題も多い。

BlueBorne

Bluetoothには、第三者のハッキングによって遠隔操作されてしまう「BlueBorne」と呼ばれる脆弱性が見つかっている。
BlueBorneの影響を受けるのは、スマホやパソコンなどである。各社それぞれBlueBorne対策を施した最新版のOSを提供しているため、最新版にアップデートしておく。

遅延

Bluetoothイヤホンなどを使用した場合、通信速度が遅いため音が遅れて聞こえる。音楽だけを聴くなら気にならないが、特にスマホで動画を見る際は遅延を感じるだろう。

音質の劣化

音楽を聴く用途で使われることの多い通信方法として致命的な音質の劣化が発生する。これはデータ転送の際に音声を圧縮するためである。

音楽を聴くためのBluetoothイヤホンを購入するなら、aptX、AAC、LDACなど高音質のコーデックに対応した製品を選ぶとよい。ちなみに分離型のBluetoothイヤホンはなくしやすいので注意。

固定パスキーの罠

ペアリング方法として、パスキー認証が必要な場合がある。この場合、パスキーを入力できるデバイスでないと接続できない。NFC接続が可能であれば、パスキー認証は必要ない。

ワンセグの音声出力

Bluetoothでワンセグを視聴する場合、SCMS-T以外では音声出力できない決まりになっている。

SCMS-T方式とは、不正コピーを防止するための技術で、SCMS-T対応していないイヤホンではワンセグ音声を聴くことができない。

参考