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uchan 2021年03月07日作成
セットアップや使用方法 セットアップや使用方法 閲覧数 2932
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ヤフオクで電子工作の道具を買おう(測定器編)

電子工作をやっているけど、オシロスコープなどの測定器は高価なのでほとんど持ってない、という方に向けて、ヤフオクで手に入る測定器類を紹介します。まず、この記事で扱う測定器を紹介した後、ヤフオクでの相場と選定ポイントを示します。この記事を読むと、きっとオシロスコープなどを買いたくなるし、十分買える値段だということが分かると思います。

電子工作で使う測定器

電子工作をやるには、テスターをはじめとして、各種の測定器があると便利です。はんだごて1本でキットを組み立てて遊ぶことも不可能ではありませんが、配線が正しいことを確かめたり、回路の動作を観察して問題点を発見したり、といったことをするには測定器が必要です。適切な測定器があると回路製作やデバッグがスムーズになり、電子工作がより楽しくなります。

ヤフオクでの相場や選定ポイントをお伝えする前に、この記事で扱う測定器を紹介します。

テスター

テスター SANWA DP-700

電圧や電流、抵抗値などを測る測定器です。電子工作で用いる測定器の中では最も基本的なものです。他の測定器は持ってなくてもテスターだけは持っている、という方も多いのでは?デジタル方式で表示するものをデジタルマルチメーター(DMM)といいます。

筆者は SANWA(三和) DP-700 を使っています。これは父親から譲られた古いテスターですが、使い勝手が良いので使い続けています。特に、導通ブザーが鳴るまでの遅延が無い点が気に入っています。以前、とあるテスターを購入したところ、導通ブザーが鳴るまでに 1 秒程度の遅れがあり、使い物にならないということで手放しました。

オシロスコープ

オシロスコープ KENWOOD CS-5265

測定器の花形といえばオシロスコープではないでしょうか。信号の形を観測するための測定器です。同じ形が繰り返される信号を見るのに適しています。上図は、自作の任意波形発生器の出力信号を観測しています。

筆者は中古で買った KENWOOD CS-5265 を使っています。KENWOOD はその昔、電源装置や測定器を製造していたので、中古の機種を探すと良く出会います。

今はデジタルタイプのオシロスコープが主流です。デジタル信号処理の結果を液晶画面に表示するタイプです。昔はアナログ回路によって信号処理をして、表示はブラウン管、という仕組みでした(おそらく、それらが混在した製品もあると思いますが、よく分かりません)。

趣味の電子回路ではアナログオシロスコープで十分ですし、安いデジタルオシロスコープよりはアナログオシロスコープの方が扱いやすいと思います。例えば、反応速度が遅い液晶画面を搭載したデジタルオシロスコープだと、細い線がぼやけて見にくいですからね。筆者は中古で買ったアナログオシロスコープを使っていますが、さすがブラウン管、画面の表示速度は申し分ありません。

少し深い話をすると、そもそも、デジタルオシロスコープは、デジタル回路により信号を記憶できるという特徴によって、アナログオシロスコープとは使い方が本来的に異なる、という事情もあるかもしれません。アナログオシロスコープは、同じ形の波形がずっと繰り返されることを前提とした計測器です。100回に1回だけ信号の形が崩れる、などの現象を発見するのには向いていません。一方で、デジタルオシロスコープは、原理的にずっと前の信号を記憶し、表示し続けることができます。異常な信号を捉えて記憶しておくことが可能なのです。

アナログオシロスコープは、信号のジッタと呼ばれる現象を観測することができます。ジッタとは、信号のタイミングの揺らぎのことです。矩形波だったら、HIGH になっている期間と LOW になっている期間が不安定だとジッタが発生します。アナログオシロスコープのブラウン管は良くも悪くも残像現象があります。これを利用し、頻度が高い部分が明るく、頻度が少ない部分は暗く映るということになります。ジッタを統計的に捉えることができるわけです。

デジタルオシロスコープは基本的には最新の測定データが 1 本の線として描かれます。液晶画面は更新が遅いことはあれど、ブラウン管のような残像はありませんから、ジッタが見えるわけではありません。これを解決するために、デジタルオシロスコープには「重ね描き」機能を持つ機種があります。捉えた信号を画面に重ねて表示する機能です。重ねる際に頻度により色の濃さ(あるいは色そのもの)を変えることで、アナログオシロスコープの残像のようにジッタを統計的に捉えることができるようになります。Tektronix はこの技術を「デジタルフォスファ」と呼んでいるようです。(フォスファは蛍光体、つまりブラウン管ディスプレイのことです)

直流安定化電源

直流安定化電源 KIKUSUI PMC18-2A

直流安定化電源は、設定した電圧(あるいは電流)で電気を出力する装置です。同様の装置に AC アダプタもありますが、AC アダプタに比べると、任意の電圧を設定でき、電流制限ができるという点で、電子回路の実験には直流安定化電源があると便利です。

筆者はヤフオクで買った KIKUSUI(菊水) PMC18-2A を使っています。とてもシンプルな機能の電源装置ですが、定電圧駆動、定電流駆動のどちらも設定できるため、いろいろな実験が可能です。

ファンクションジェネレーター

これは筆者は持っていないのですが、欲しい装置の 1 つです。好きな周波数、好きな波形の信号を出力できます。トランジスタで増幅回路を作った際のテスト入力信号として、デジタル回路を駆動するためのクロック源として利用できます。

信号を出力する装置なのですが、一般的に「測定器」の分類だそうです。回路の動作を測定するときの信号源として使うからでしょうか。

ヤフオクで買おう

ここでは筆者がヤフオクをしばらくウォッチした経験を元に、それぞれの装置の相場や選定ポイントをご紹介します。

テスター

実は、筆者はあまりテスターをヤフオクで探した経験がないので、ここで紹介しません。というのも、テスターはかなり精度を求められる装置なので、品質が分からないヤフオクで買うのは不安だというのと、有名メーカーのそれなりの機能を持つ新品でも 1 万円しないで購入できるという理由があります。定価 1 万円の製品をヤフオクで買うとしても、ある程度綺麗できちんと動く物を探すと、せいぜい数千円くらいしか安くならないわけです。

筆者が今使っている DP-700 はさすがに古くて精度が不安なので、近いうちに新品を買おうと思います。今検討しているのは SANWA CD771 です(お勧めテスターがあったら教えてください!)。筆者が知っているテスターの有名なメーカーには、三和、日置、横河、岩通、共立、FLUKE、Tektronix、Keysight(Agilent)などがあります。

オシロスコープの選び方

オシロスコープは新品だと非常に高価で、しかも精度が悪くても問題になりにくいです。ですので中古で買うという選択肢が向いている測定器だと思います。

精度が悪くても問題ない理由は、オシロスコープを使う主目的は信号の形を目で見ることだからです。波形を目で見るわけですから、電圧や時間軸の精度などが少しくらい悪くても困りません。テスターの場合、測った抵抗値がズレていると回路の精度が出ません。一方、オシロスコープは目で正確に見えるレベルの精度があれば十分なのです。

解説パートで書いたように、デジタルオシロスコープなら重ね描き機能(デジタルフォスファ)を持つ機種が狙い目です。ただ、この機能を持つ機種は(筆者の知る限り)上位機種であることが多く、ヤフオクでも相対的に高い価格が付きがちです。ですから、お金を節約したい趣味の電子工作ではアナログオシロスコープが狙い目だと思います。

ヤフオクでは岩通や KENWOOD などのアナログオシロスコープが 2,000~10,000 円程度で出品されています。通電さえしない、と明記してあるものは修理しないかぎり使えないことが確定しているので避けましょう。通電のみ確認、という出品は安いですが、使えない物だった際の残念感が強いと思います。安心できるのは、きちんと波形が映し出された写真が掲載されているものですね。

価格を左右するのは、きちんと機能することが明記されているか、つまみ類が壊れていないか、が主要因の印象があります。オシロスコープの性能を決める主な指標としてはチャンネル数と帯域幅がありますが、アナログオシロスコープは多くが 2ch となっていて製品間で差がなく、価格にはあまり影響しません。帯域幅も、趣味の電子工作では数 10 MHz くらいあれば十分だからか、その高低で価格はそれほど変わらない印象です。

アナログオシロスコープをヤフオクで探すときは「オシロスコープ」と検索すると良いです。わざわざ「アナログ」と付けないことが多いので、「アナログオシロスコープ」だとヒットしません。逆に、デジタルオシロスコープは「デジタル」とわざわざ付けることが多いようです。

デジタルオシロスコープは Tektronix や Keysight などの製品が 10,000~100,000円程度で出品されています。アナログオシロスコープに比べてかなり高価になりやすいですね。「デジタルフォスファ」やそれに類する機能が搭載された製品かどうかは、カタログを見ないと分からないことが多く、アナログオシロスコープに比べて製品選びも大変です。

直流安定化電源の選び方

直流安定化電源も、有名メーカーの製品はかなり高価(数万円~数十万円)なので、中古で安く買いたくなる部類かと思います。電圧出力の精度が多少悪くても(安定している限りは)テスターで測って修正すれば良いので、そこまで問題にはならないでしょう。

ヤフオクでは菊水や KENWOOD などの製品が 1,000~20,000 円程度で出品されています。通電しないと明記してあるのは避けるとして、可能であれば電圧が設定通り出ることが確認されているものを選ぶと安心ですね。

動作する機種の中から、希望の電圧と電流に対応した機種を選びます。といっても、電源装置はいろいろな電子回路につなぎ替えて使うものですから、特定の電圧、電流の希望があるわけではありませんよね。一般的な電子工作に使うなら、電圧は 10V 程度、電流は 1A 程度に対応していれば広く応用できると思います。

トランジスタやオペアンプを用いた増幅回路を実験する可能性があるなら、欲張って正負両電源を探してみるのもいいかもしれません。多くの機種は単電源(出力が 1 系統)のものですが、時々±18V などの出力が可能な機種があります。単電源の機種より値は張りますが、良い物を買ったという満足感は得られるんじゃないかと思います。あるいは、きちんとしたメーカーの電源であれば単電源の機種を 2 台繋ぐことで正負両電源として使えるようになっています。ヤフオクなら 2 台買っても安いでしょうから、意外と良い戦略かも。

直流安定化電源は電圧、電流表示がアナログメーターのものとデジタル表示(多くが 7 セグメント LED)のものがあります。アナログメーター式の方が概して古い型なので安いものが多い印象です。デジタル表示の方が電圧を希望の値に正確に設定できますが、そもそも中古の機種は校正がされていないのが普通なので、デジタル式でもどこまで正確な電圧が出るかは不明です。

ファンクションジェネレーターの選び方

これも、高価な機種が多いので中古で買いたいところです。

オシロスコープや電源と同じく、これもアナログ式とデジタル式があります。アナログ式はボタンで波形を選び、ダイアルで周波数を設定するような機種がほとんどです。矩形波、サイン波、三角波には多くの機種が対応しています。アナログ式の製品では正確な周波数設定は(ダイアルを目測するしかないので)かなり無理があるかと思います。デジタル式は設定周波数がデジタル表示されるため、目的の周波数に合わせやすいです。まあ、中古ですからどこまで精度があるかはピンキリでしょうけど。

趣味の電子工作で使う分には、そこまで正確な周波数は要らないんじゃないかと思います。デジタルマルチメーターには周波数を測れる機能を持つ機種があり、そのような機種を持っていればファンクションジェネレーターの出力を測って設定値を修正するといったことも可能ですね。

ヤフオクではアナログタイプが 1,000~5,000 円程度で、デジタルタイプが 2,000~30,000 円程度で出品されています。高価な製品は「任意波形発生器」といって、矩形波やサイン波、三角波などの単純な信号だけでなく、任意の波形を出力できる機能を持つものがあります。趣味の電子工作で使うのであればアナログタイプでも十分じゃないかなと思います。

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本業はプログラマですが、昔から電子工作は趣味でやってます。初めてのプログラミング言語はPICアセンブラです。 モジュールを買ってきて組み合わせるだけでなく、部品の動作原理をきちんと理解して回路を設計することに楽しさを感じます。 2021年より「uchanの電子工作ラボ」という施設を運営しています。はんだごてや測定器が使えます。 https://uchan.net/lab/ 2021年3月22日に「ゼロからのOS自作入門」を出版しました。Amazon→ https://amzn.to/2NP3FUj
  • uchan さんが 2021/03/07 に 編集 をしました。 (メッセージ: 初版)
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