(Jo^▽^)ノぁぃ♪
本稿は『オーディオに関する私の考え』シリーズの第6回
今回は、MC専用 イコライザアンプの新しい構成を述べる。
「この投稿について知っておいてほしい基本ルールや前提」
私は電子回路設計・開発のスペシャリスト、いわゆるサーキットマスターとして、オーディオを感覚論や評論ではなく、電子工学および制御理論の立場から捉えている。
マイコン制御やアナログ・パワエレ(パワーエレクトロニクス)回路が専門だが、設計者としての根はアナログ回路にあり、その延長としてオーディオに深く関わってきた。
本シリーズでは、現代のデバイスおよび回路技術を前提に、オーディオシステムの「あるべき姿」を工学的観点から再定義することを目的とする。
なお本稿では「音の良し悪し」については論じない。音の評価は個人の主観に依存するものであり、他者と完全に共有可能な客観的尺度を持たないからである。
「本シリーズで扱うオーディオ回路設計の基本思想は、次の4点に集約される。」
1)必要最小限のパーツで仕様を満たすこと(余計な物は要らない)
画期的な回路とは、不要な自由度を排除し、基本法則に立ち返り、最小の構成で最大の効果を引き出すものである。
2)外界および部品の影響を極力排除すること(構成部品の影響を排除)
環境変動や部品ばらつきに依存しない構造こそが、再現性のある設計を可能にする。
3)電圧伝送ではなく電流伝送を基本とすること(低インピーダンス化によりノイズおよび伝送路依存性を低減する)
電流伝送はノイズに強く、伝送路や負荷条件の影響を受けにくい。
4)再生システムで可聴帯域内に極がある場合、位相回転そのものよりも、群遅延の急峻な変動や周波数依存性の非線形性を抑えることが重要である。
周波数特性がフラットであることは重要な設計要件であるが、それだけでは時間軸上の整合性や空間的な再現性を十分に保証するものではない。
今回もこの4原則に沿って構成する 。
全く新しい回路の完成形をそのままAIに評価させるよりも、機能ごとのブロックに分割し、それぞれについて「何を実現したいのか(意図)」「どのような条件で成立するのか(前提)」「どのように振る舞うと考えるのか(仮説)」を明示する。
これによりAIは各ブロックを既知の回路として解釈しやすくなり、局所的な検証と全体の統合の双方が可能になる。結果として、一般論に留まらず、設計意図に沿った具体的かつ踏み込んだ検討へと発展させることができる。
「本稿の結論」
MC専用 イコライザアンプは、上の基本思想で述べた 1)必要最小限のパーツで仕様を満たすこと を実現すべく設計。
MC専用とは言っても、ヘッドアンプ+イコライザではなく、オーディオに関する私の考え その3で述べた「仮想接地による電流伝送、 VCT回路(Virtual Current Transmission)」をベースに設計。
https://elchika.com/article/cf818647-2700-40f1-8218-50195c447e26/
「回路構成のコンセプト」
1)低ノイズ 「ノイズを発生させない」
2)電流伝送 「ノイズを受けない」
3)インピーダンス整合 「負荷の最適化」
4)目標ゲインは設定するが、部品は コンデンサ=E3系 抵抗器=E6系から選択するので、RIAA時定数最優先のパーツ選択となる。
まず、MCカートリッジの電気的性質と、それを扱うためのヘッドアンプ(VCT)の基本構造を確認する。
「基本となる MCヘッドアンプ」
「オーディオに関する私の考え その3」で設計した仮想接地による電流伝送、VCT回路を利用する。
https://elchika.com/article/cf818647-2700-40f1-8218-50195c447e26/
「使用するOPアンプ」
LT1115CN8#PBF 試作に便利なDIPパッケージ
https://www.analog.com/media/en/technical-documentation/data-sheets/lt1115fa.pdf
https://www.digikey.jp/ja/products/detail/analog-devices-inc/LT1115CN8-PBF/889151
優先課題のノイズ 0.9nV/√Hz
入力バイアス電流 10nA
入力オフセット 最大100μV MCカートリッジの出力インピーダンス(2~40Ω)に対してオフセット誤差は無視できるレベル
電源電圧:±2V~±20V
8ピンDIP \1,649
「本回路が対応するMCカートリッジ」
VCT回路によるMCヘッドアンプ回路の対応カートリッジ及び出力電圧
1)高インピーダンス型
出力電圧 0.25~0.35 mV(1kHz)
内部インピーダンス 40 Ω
推奨負荷抵抗 100 Ω
推奨負荷抵抗を接続した場合の出力電流 3μA(1kHz)
2)低インピーダンス型
出力電圧 0.05~0.2 mV(1kHz)
内部インピーダンス 2~3 Ω
推奨負荷抵抗 10 Ω
推奨負荷抵抗を接続した場合の出力電流 10μA(1kHz)
「カートリッジの推奨負荷抵抗」
MCカートリッジは、小さな発電機です。
針が動くとコイルが磁界の中で振動し、電圧が発生します、このとき、アンプ側に接続する「負荷抵抗」の値によって、コイルの動き方が変わります。
負荷抵抗値が小さい
→ 電流が多く流れる
→ コイルに強い逆起電力が発生する
→ 振動が強く抑えられる(強いブレーキ)
負荷抵抗値が大きい
→ 電流があまり流れない
→ 逆起電力が弱い
→ 振動があまり抑えられない(弱いブレーキ)
つまり、負荷抵抗は、「電気的なブレーキの強さ」を決める部品です。
このブレーキが強すぎると高域が減衰し、弱すぎると共振が強調されてピークが出ます。
そこでメーカーは、機械系の共振特性と電気的制動のバランスが最適になる値を「推奨負荷抵抗」として指定しています。
設計者が意図した周波数特性を得るためには、この値を守ることが重要です。
なお、信号源と負荷のインピーダンス関係を適切に保つことを、一般に「インピーダンス整合」と呼びます。
これらの電流値を基準として、後段のイコライザ回路のゲインと時定数を設計する。
「MC専用ヘッドアンプ回路の説明」
ダンピング抵抗で機械系を確定し、信号は電流として無電圧状態で伝送し、後段で電圧に再構成する。
±5Vの電源は、前回投稿の「オーディオに関する私の考え その2」で設計した、CAAP 「Control-Theoretic Approach to Audio Power」 (制御理論に基づくオーディオ電源)で構成
「MC専用 イコライザアンプの回路構成」
MCヘッドアンプ回路にOPアンプを1段追加して、2段構成でRIAAカーブを実現。
イコライザアンプの、最終的な目標出力電圧(1kHz)、目標とするがRIAA時定数を優先するので多少上下する。
高インピーダンス型 で90mV
低インピーダンス型 で300mV
図に示すRIAAカーブのように、20kHzでは1kHzに対して-20dBの補正がかかる。つまり、カートリッジで発生する出力電圧は20kHzで1kHzの10倍に達する。
これは「定格値」なので、45回転のLP等は外周近辺の「線速度」が早く「定格値」の何倍もの電圧が発生する可能性が有る。
MCヘッドアンプの20kHzでの出力電圧は
高インピーダンス型の最大出力電圧(30mV/20kHz)
低インピーダンス型の最大出力電圧(100mV/20kHz)
を基準に設計を進める
「目標設定」
1)1段目 RIAAカーブ 2120Hzより高域側を受け持つ
VCT回路のI/V変換回路の帰還抵抗(1kΩ)とコンデンサ(1nF)のfcは159kHzだが、これをRIAAカーブ 高域側の2120Hz(75μs)に合わせてローパスフィルタに設定。
VCT回路の時定数は、コンデンサをE3系列から選択し、抵抗はE6系から2本の並列接続で構成し、目標ゲインより時定数最優先で構成。
2)2段目 VCT回路からの出力をRIAAカーブ 低域側の500Hz~50Hzを低域ブーストして実現。
コンデンサをE3系列から選択し、抵抗はE6系から2本の直・並列接続で構成し、目標ゲインより時定数最優先で構成。
時定数はCR1%品で決め打ち
「回路定数」
「初段」
Rf = 7.5kΩ とした場合
ハイインピーダンスMC 出力電圧0.3mV→推奨負荷抵抗100Ω 出力22.5mV(1kHz)
ローインピーダンスMC 出力電圧0.1mV→推奨負荷抵抗10Ω 出力75mV(1kHz)
MCカートリッジでは20kHz付近の出力電圧が1kHzの約10倍に達する可能性があるため、本回路では最初のI/V変換段でRIAA 75μs特性に対応するローパスフィルタを構成し、後段のオーバーロードを防止している。
帰還抵抗は7.5kΩで構成したい、Cが10nF(1%)ならばRは7.5kΩ(1%)となる、7.5kΩをE6系列で並列接続すると15kΩ+15kΩ(1%)
初段には fc=2122 Hz のローパスフィルタを配置している、これにより、帯域を制限することでノイズ成分の増幅を防いでいる。
初段でこの処理を行うことで、以降のRIAA補正が素直に働き、イコライザ全体の動作が安定する。
初段の出力
1)高インピーダンス型 出力電圧は、22.5mV(1kHz)
2)低インピーダンス型 出力電圧は、75mV(1kHz)
シミュレーション結果も良い数値が出ている
OPアンプのRF=7.5kΩとした時の帯域ノイズは
実効帯域 約2.1kHz 0.52μV
高インピーダンス型 出力電圧、22.5mVに対して-92dB
MCカートリッジの出力が小さいにもかかわらず、ここまでのS/Nを確保できているのは、VCT構成+帯域制限+低ノイズOPアンプの相乗効果。
入力ノードを仮想接地とすることで、ケーブルおよび外来ノイズの影響を最小化している
「2段目」
2段目では電圧伝送が基本で反転増幅、なので1段目と合わせて位相は(反転+反転)正相となる
反転増幅で500Hz~50Hzを低域ブースト、 低域の RIAA は 3180μs(約50 Hz)と 318μs(約500 Hz)
反転増幅の帰還側に CR ネットワークを入れると、周波数によって帰還量が変化し、結果として低域だけゲインが上がる“アクティブ低域ブースト”が実現できる。
RIAA録音側では、50Hz以下を大きく減衰させ、500Hz以下を緩やかに減衰させて記録している、再生側ではその逆(ブースト)を行う必要があり、それが 3180μs/318μs の時定数である。
シミュレーション結果も良い数値が出ている
2段目の入力
高インピーダンス型 入力電圧は、22.5mV(1kHz)
低インピーダンス型 入力電圧は、75mV(1kHz)
2段目のゲイン4.43倍(1kHz)
高インピーダンス型 出力電圧は、99.6mV(1kHz)
低インピーダンス型 出力電圧は、336mV(1kHz)
初段の出力(22.5mV/75mV)から、イコライザアンプの最終出力(90mV/300mV)を得るために、1kHzで約4.4倍のゲインを設定した。
部品点数が多めだが、抵抗器はE6系からの選択なので直・並列で時定数に合わせている
本構成では高Qの極を持たないため、群遅延の急変が抑えられる
「全回路図」
初段はVCT回路+75μsのLPF
2段目は反転増幅による低域ブースト
シミュレーション結果もRIAAに準拠したカーブと成っている
「電源回路」
±5Vの電源は、以前投稿の「オーディオに関する私の考え その2」で設計した、CAAP 「Control-Theoretic Approach to Audio Power」 (制御理論に基づくオーディオ電源)で構成
使用するOPアンプは「LT1115CN8#PBF」、直近にパスコン(バイパスコンデンサ)有りですが、当然必要なのであえて記載なし。
イコライザアンプ出力の1kΩのダンピング抵抗は「必須」です、OPアンプの出力を直接「基板外」へ出してはいけません、外部よりのノイズが高周波の場合OPアンプの出力段では抑えきれず、OPアンプの反転入力に達します、酷い場合は不安定どころか発振さえ誘発します
ダンピング抵抗の副作用は出力インピーダンスの上昇と「次段」への信号レベル低下ですが、測定器回路では無いので出力低下はプリアンプでレベル調整できます。
今後発表する、後段プリアンプの入力もVCT(仮想接地)で受けるため、ダンピング抵抗1kΩはそのまま電流伝送の送り出し抵抗として機能し、信号レベルの低下は生じない。シリーズ全体を通じて電流伝送が一貫して維持される。
「ノイズ特性」
初段はOPアンプの電圧雑音(0.9nV/√Hz)は低インピーダンス源のため、電圧雑音の影響は小さく抑えられる
電圧利得ではなくトランスインピーダンスで変換するため、電圧増幅に比べノイズの増加が抑えられる
実効帯域 約2.1kHz 0.52μV
「総合S/N」
テーブル
| 項目 | 高インピーダンス型 | 低インピーダンス型 |
|---|---|---|
| カートリッジ出力(1kHz) | 0.3mV | 0.1mV |
| 初段出力(1kHz) | 22.5mV | 75mV |
| 最終出力(1kHz) | 99.6mV | 336mV |
| 総合S/N (20kHz積) | 92dB | 103dB |
総合ノイズは初段支配、2段目の寄与は小さい
低インピーダンス型はゲインが高い分S/Nが改善
本回路は帯域制限を行っているため、広帯域S/Nとは単純比較できないが、広帯域アンプと比較して有利
「市販品との比較」
AIに市販品との比較データをまとめてもらった
低インピ型(103 dB)は、20万円級のTEAC PE-505を超えるS/N
理由は明確で
初段が VCT(電流伝送)+2122Hz LPF 「75μsの一次極」
ノイズ帯域が 意図的に2kHzに制限されている
低インピMCは 電流が大きく、S/Nがさらに改善
→ MC専用として最適化された構造が、市販の汎用MM/MC機より有利に働く
高インピ型(92 dB)は、3万円クラスのAT-PEQ30を上回る
こちらも初段支配ノイズ構造が効いている
ただし低インピ型ほどの電流が得られないため S/N はやや下がる
それでも 92 dB は十分に優秀
本設計の値:シミュレーション値。実測値ではない。帯域制限(2122Hz LPF)による積分のため、広帯域(20Hz~20kHz)実測値とは測定条件が異なり、単純比較には注意が必要。
市販品の値:各社公称仕様書に基づく値。多くはIHF-A加重またはJIS規格に準拠した実測値と推定されるが、入力終端抵抗・ゲイン設定・帯域条件は製品ごとに異なる。
RIAA誤差:本設計はE6系抵抗縛りによる意図的トレードオフ。E12系を使用すれば±0.5dB以下も可能。
「出力オフセットが気になる場合」
本回路はDC直結構成のため、OPアンプの個体差により微小な出力オフセットが生じる可能性があります。これを排除し、かつ後段への影響を完全に遮断したい場合は、2段目の出力をコンデンサでAC結合し、さらに電圧バッファを介して出力する構成も可能です。
この際、カットオフ周波数を1Hz以下に設定することで、可聴帯域内の位相特性を極めて平坦に保つことができます。具体的には、高入力インピーダンスのバッファ(FET入力のボルテージフォロワ等)を置くことで、カップリングコンデンサの容量を数μF程度の高品質なフィルムコンデンサに抑えつつ、安定した動作を両立できます
「位相特性」
本回路は「反転増幅2段構成」なので、イコライザアンプの出力は入力と同相です。
トランスインピーダンスアンプ(TIA)はフォトダイオードアンプや光ファイバー受信機では標準技術です。
TIA自体は既存だが、MCカートリッジのダンピング機構と組み合わせてケーブルを擬似電流モード伝送路として使用する構成は従来の電圧伝送型とは異なるアプローチ。
「まとめ」
・高価なパーツに頼らず、構造そのものが外乱を封じ込めることを目的とした“ゼロベース設計”。
・既存回路のコピーでは到達できないノイズ源の位置と帯域を理論的に制御
・MCカートリッジの物理特性を最大限に活かす
・本回路は高Qの極を持たず、群遅延の急峻な変化を抑制した構成となっている
本投稿は「再現性を保てるか」を主眼に置いており、理論検証およびシミュレーションにより成立を確認している段階。
本稿の内容について疑問点があれば、回路ブロックごとに分割して検討することを推奨する。設計意図・前提条件・仮説を明示することで、より深い議論が可能になる。
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JO
さんが
前の木曜日の1:32
に
編集
をしました。
(メッセージ: 初版)
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