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X 2021年02月28日作成 (2021年12月07日更新) © MIT
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パチンコ玉発射機の製作

パチンコ玉発射機の製作

パチンコ玉発射機を製作したので簡単に紹介していきます。

【重要】
本記事で取り上げる回路では400Vほどの高電圧を扱います。また、私自身は電気回路の専門家ではないため部品の定格などから回路が不適切である可能性が高いです。もしこの記事を参考に同様のものを製作される場合は、他の資料も十分に参考にした上でご自身の責任で製作されるようお願いいたします。とても魅力的なEMLの分野ではありますが、製作には危険を伴います。初心者の方は逸る気持ちを抑えて、ある程度電子工作に慣れてから取り組みましょう。なお、この記事では詳細な回路図については示していません。回路の基本は他のサイトなどで調べてみましよう。ただし回路中の重要な部品については古い資料だと入手困難なものも多いので私が使ったものの型番を載せています。2021年2月現在秋月電子で入手可能です。参考にしてみてください。

はじめに
このパチンコ玉発射機はEML(ElectroMagnetic Launcher)と呼ばれる電磁力を用いた加速器の一種で、しばしばコイルガンとも呼ばれています。仕組みとしてはコイルを巻きつけた筒に一瞬だけ電流を流すと瞬間的に磁場が生じます。そして、筒の中に鉄球があるとその磁場に引きつけられて加速しますが、磁力が生じるのは一瞬なのでコイルを通過する頃にはもう磁場は存在せず鉄球を引き戻す力は働きません。そんなわけでコイルを通過した後はそのまま慣性で鉄球が飛んでいくというのがこの発射機の仕組みです。

回路の概要
 ここからはパチンコ玉発射機の作り方について軽く紹介します。まずは回路の概要をまとめます。
(1)鉛蓄電池(12V)の電圧を昇圧チョッパ回路で400Vほどに昇圧する
(2)昇圧した後の高電圧でコンデンサーに充電する
(3)コンデンサーの電圧を監視し目標電圧まで充電できたら充電を停止させる
(4)スイッチング用トライアックに発射信号を送りコンデンサーからコイルに電流を流す

とりあえずはこんな感じです。少し説明すると、鉛蓄電池というのは車のバッテリーなどにも使用されている二次電池で、充電することで繰り返し使用できます。専用の充電回路を用意する必要があったり運用は面倒ですが、大電流を流せるためコンデンサーに素早く充電することができます。ACアダプターでもできますがそれなりに充電時間がかかります。

昇圧回路についてですが、昇圧チョッパ回路ではコイルに電流を流して止めて流して止めて……というのを高速で繰り返す必要があります(気になる方は「昇圧チョッパ回路」で調べてみてください)。そこでタイマーICのNE555などを使っても良いのですが、コンデンサーの充電電圧の監視も行う必要があるため今回はPICマイコンでまとめて制御してしまうことにしました。マイコンを使うとライター(Pickit4など)は必要ですが少ない部品点数で高機能なものが作れます。

最後にトライアックという部品について言及しておきます。初めて聞くという方も多いのではないでしょうか。このパチンコ玉発射機においてはコンデンサーの電気をコイルにそのまま流してしまいます。コイルといってもインダクタンスはそんなに大きくないのでほぼショートです。よってこの際には非常に大きな電流が流れるのですが、これを普通の機械式スイッチで行うと悲惨なことになります。おそらくスイッチの接点が触れる瞬間に爆音とともにスイッチから火花が飛び散るでしょう。スイッチが癒着して使い物にならなくなるかもしれません。そこで、こういう場合には半導体スイッチを使います。トライアックというのはトランジスタのように3本足の部品なのですが、一瞬ゲート電圧をかけることによって他の2端子に電流が流れ続けます(詳しく知りたい方は自分で調べてみてください)。これによって発射ボタンのスイッチには少ししか電流は流れないのですが、その信号によってコイルに流れる大電流を制御することができます。

ここからは実際に製作したものを紹介していきます。

パチンコ玉発射機本体
まずは外側を見てみましょう。本体はMDF材をのこぎりで切って箱にしています。
表側
裏側
この蝶番のついた蓋を開けると鉛電池の格納場所が現れます。蓋の右にあるトグルスイッチは充電回路と発射回路の切り替えスイッチ(誤射防止用)で、その右にあるのは充電電圧確認用のLEDです。
電圧計
鉛蓄電池の格納場所です。12V0.7Ahの小型のものを使用しています。買ってきたときについていたコネクターは使いづらかったのでDCジャックのオスをはんだ付けして使っています。
バッテリー格納場所
バッテリー格納時
少し見づらいですが板の表面に丸い模様があるのが見えるでしょうか。これは竹ひごの断面です。この外枠はMDF材(木目のない木の板)でできていて基本的には木工用ボンドで接着しているのですが、それだけでは強度に不安があったので辺にドリルで穴を開けて竹ひごを入れてあります。強度の向上を期待していますが、どこまで効果があるかはわかりません。
竹ひごによる補強
次は内側を見ていきます。上に長くあるのが銃身に相当する部分で、水道管にも使われている塩ビパイプを使用しています。本来はコイル半径は小さくしたいので弾はもっと小さいものを使うべきなのですが、鉄の小さい弾というのはなかなか見つからないものです。そこで私はたくさん用意できるパチンコ玉を飛ばすことにしたのですが、そうなるとどうしても太いパイプが必要になりこんな感じになりました。
内部
発射用スイッチング回路です。トライアックとフライホイールダイオードが入っています。フライホイールダイオードは発射後のコンデンサーの逆充電を防ぐためのものです。忘れがちですが必ず取り付けましょう。また、見ての通り発射用の部分は大電流が流れるため太い導線を使用しています。
発射用スイッチングコイル
パイプに巻きついている銅色の線がポリウレタン導線でできた発射用コイルです。エポキシ接着剤で一層ずつ固めながら丁寧に巻いていきました。パイプの後方には内部に磁石を設けており先端から詰めたパチンコ玉が落ちないようにしています。
発射用コイル
持ち手に場所が余ったのでパチンコ玉を入れる場所を用意してみました。下から取り出せます。ただし蓋が緩いので使いにくいです。
パチンコ玉格納場所
昇圧チョッパ回路です。MOS-FETには放熱板が取り付けられています。電源は12Vですが、マイコンの動作電圧は5Vなので3端子レギュレータで降圧したものをマイコンに供給しています。また、下に見える青い可変抵抗で出力電圧の分圧比を変更し、マイコンに入力する電圧を変化させることでドライバーだけで充電電圧を変えられるようにしています。
昇圧チョッパ回路
これが発射用コンデンサー、つまりはパチンコ玉発射機の命です。しっかりはんだ付けしておきましょう。
発射用コンデンサー
充電と発射の切り替えスイッチです。誤射対策は非常に重要です。
充電・発射切り替えスイッチ
電圧表示用LEDは取り外し可能にしました。高電圧系はもちろん電子工作について言えることですが、はんだ付け不良は死を意味します。はんだ付けの失敗というのは発見しにくい上に致命的な欠陥をもたらします。特に高電圧系では事故にもつながりかねません。しっかり丁寧に回路基板を作りましょう。上に見えるDCジャックのメス端子や左上にあるターミナル(ネジのついている部品)は動作試験用の部品です。完全に組み立てる前に一度は発射実験が行えるような回路設計にしたいものです。
昇圧チョッパ回路詳細

使用した主要部品
以下に私の使用した主要部品を示します。参考にしてみてください。ただし昇圧チョッパ回路のスイッチング周波数とデューティ比は重要な部分ですが、作った回路に大きく左右される気がするのでいろいろ試してみましょう。個人的には周波数やデューティ比は目標電圧以上が出るくらいに大まかに調整しておき、充電停止制御は出力電圧を分圧してAD変換などで好きな電圧で充電が止まるようにうまく調整すれば良いと思います。

【昇圧チョッパ回路】
制御用PICマイコン:PIC16F1827
スイッチング用MOS-FET:TK20A60U(600V20A)
ダイオード:UF2010(1000V2A)
トロイダルコイル:200μH9A

【発射用コイルスイッチング回路】
発射用コンデンサー:400V680μF×2並列
フライホイールダイオード:ER504(直列方向に2個、並列方向に3個で2×3=6個使っています(負荷が分散する保証はないのであまり良い方法ではありませんが))
スイッチング用トライアック:BTA41-600B(600V40A)
発射用コイル:0.8mm径ポリウレタン導線

最後に
ここまでパチンコ玉発射機について説明してきました。高電圧系の電子工作はもちろん危険がありますし気軽に手を出せるものではありませんが電子工作に慣れてきたら試してみるのもありでしょう。世界がかなり広がるはずです。でも作るときは安全第一で。それと補足になりますが、このパチンコ玉発射機(コイルガン)は発射用コイルを渦巻型に巻いた平面コイルに付け替えることでディスクランチャーというEMLに改造することができます。コイルガンとは全く違う原理で飛ぶものなので気になる方は調べてみてください。

ではみなさん楽しい電子工作生活を!

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  • X さんが 2021/02/28 に 編集 をしました。 (メッセージ: 初版)
  • X さんが 2021/02/28 に 編集 をしました。
  • X さんが 2021/02/28 に 編集 をしました。
  • X さんが 2021/12/07 に 編集 をしました。
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