はじめに
ネックスピーカーからのテレビ音量の不足を補う装置として、大塚明さんの「Line Level Adjuster」とぺるけ(木村哲)さんの「デジタル音源のノイズ対策用LPF」を組合わせた、「ネックスピーカー用ゲイン可変アンプ 」を一年前に製作しました。耳の遠くなった難聴の母にも喜ばれ、家族もテレビの爆音から解放されました。(これは、別の製作記事にしたいと思います)
しかし、しばらく使ってみると不満が出てきました。母の耳元では常にテレビの音が優勢となり、家族の声が届きにくくなったのです。
そこで、家族の声はマイクを使って母の耳元に届け、その間はテレビの音量を自動でミュートするネックスピーカー用のミキサーを製作したので、紹介します。
「ゲイン可変アンプ」は難聴の母のために、ネックスピーカー単体での音量不足を解消すべく、ゲインの大きなアンプ回路を見つけて製作したものです。テレビの音量不足を感じている方には、お勧めです。
概要
ブロック図を用いて動作の概要を説明します。
① 母に語りかけたい時に、ワイヤレスマイクで音声を飛ばす
② レシーバーで受信した音声はMIC Ampで増幅し分岐させる
③ 一方は音声検出・OneShot(ミュート信号発生)回路によりミュート信号を作成し、ミュートトランジスタを駆動、TVの音量をミュートする
④ もう一方はマイクの音声信号としてそのままMIXERに入る
⑤ この結果、マイク音声が検出されれば、その時点から、設定時間だけTVの音量をミュートします。
⑥テレビの音を聞いていた母のネックスピーカーから、息子の声だけが聞こえる
⑦しばらくすると、ネックスピーカーからテレビの音が聞こえる
・音声検出・テレビ音量ミュート回路とMIXER回路は小さなブレットボードで試作・実験を行い、動作確認をしたうえで「ブレットボード配線パターンタイプ基板」で製作しました。
・試作・実験した回路をそのまま再現し組立てることが出来るので、とても便利な基板です。
<ブロック図>
(訂正)ブロック図中の、TDC114→DTC114 TDA114→DTA114の間違いです。
なお、本文中に記載した文献の回路を参考に製作しています。詳細は各文献を参照して下さい。
構成
ワイヤレスマイク・レシーバーとマイクアンプ回路
・音声入力用のワイヤレスマイクは、Amazonで購入した【 kithouse K380F 】で、106.7MHz FMで使用しています。
・レシーバーで受信したマイク音声は、2SC1815一石によるマイクアンプでレベル調整を行い、音声検出回路とMIXER回路に分岐します。アマチュア無線ではお馴染みのFCZ基板を使っています。
・レシーバー用のジャックはケース蓋にあり、基板とはコネクターで接続しています。
・ネックスピーカーは、SHARP AQUOS サウンドパートナー AN-SS1を使用しています。軽量なので、長時間使用にも適しています。
音声検出とTV音量ミュート回路
<音声検出・ミュート信号発生回路>
・レベル検出用ICのNJM2072で音声信号を検出すれば、ミュート時間を決定するLMC555によって、設定時間(MUTE TIME)に応じたOneShot信号を発生させる。ミュート時間は最長で10秒です。
<ミュートトランジスタ回路>
・OneShot信号は、デジタルトランジスタ(DTC114、DTA114)を経由してミュート用トランジスタの2SD2704を駆動し、テレビ信号をミュートします。
- 音声検出回路:NJM2072Dデータシート
- 音声検出回路:YS DESIGN STUDIOさんのブログ記事 「BAT DETECTOR Ⅲ・音声レベル検出」 を参考にさせていただきました。
- MUTE TIME回路:ブレッドボードラジオさんのブログ記事 「LM555タイマー動作の基本」 を参考にさせていただきました。
- ミュート回路:トランジスタ技術 2003/01 役立つ実用電子回路130 6-5
- ミュート回路:X_Under bar さんのブログ記事 「トランジスタミュート回路」 を参考にさせていただきました。
MIXER回路
・MIXER回路はテレビのステレオ信号とマイクのモノラル信号をミックスしますが、マイク信号入力時から設定された時間はテレビの音量をミュートし、マイク音声を優先し増幅します。ほんのわずかな遅延はありますが、マイク音声の頭が切れてしまうことはありません。
・このミキサー基板は以前に製作したものを流用しており、マイク音声入力とミュート信号の追加で、ちょっとごちゃごちゃした状態です。
- MIXER回路:トランジスタ技術 2003/01 役立つ実用電子回路130 6-6
電源回路
・電源回路はOPアンプ用に、NJM4560Dを使用したレールスプリッターで±6Vを生成しています。当初、電源回路を簡単にしたいと思い、5VのACアダプター2個による±電源を実験したのですが、雑音が多く、音声回路には不向きでした。
・小さな両面のユニバーサル基板に製作しました。(スルーホールタイプにすべきでした)
・ACアダプターのDC15Vを12Vの三端子レギュレーターで降圧し安定化と共にノイズを低減させています。
・基板上にはワイヤレスマイクレシーバー用の5Vを生成しようと試みた残骸のダイオード3本があります。残念ながらこの回路では仮想グランドとマイナス電源が短絡するため、別のACアダプターから供給することにしました。
- レールスプリッタ回路:どよよん現象@アマチュア無線さんのブログ記事 「急にレールスプリッタの実験」 を参考にさせていただきました。
使用部品
- ケース タカチYM-180(秋月:P-13357)
- ブレッドボード配線パターン基板(P-04303) 音声検出・ミュート回路、MIXER回路に使用
- NJM2072D(以前、秋月で購入したが現在は欠品中) レベル検出IC
- LMC555D(これも欠品中) タイマーICのCMOS版555
- 2SD2704、DTC114、 DTA114(I-06007、I-12467、I-12464) ミュートトランジスタとデジタルトランジスタ
- NJM5532D(I-00070) MIXER回路のOPアンプ
- TA7812S 、NJM4560 (欠品中) 12Vシリーズレギュレーターとレールスプリッター用の汎用OPアンプ
- ほとんどの部品は秋月電子から購入しました。
完成形
・音声信号を検出すれば左側のLED(昼光色)が点灯します。
・ミュート動作中は中央のLED(赤色)が点灯します。
・右側のLED(緑色)は電源表示用で、電流に余裕のある?マイナス6Vラインに繋いでいます。
<3.5mmステレオケーブルを使っての接続方法>
・テレビのイヤフォン(ヘッドフォン)端子 ~ 本機の「テレビから」端子をつなぐ
・本機の送信機へ端子 ~ ネックスピーカー用送信機の端子 をつなぐ
おわりに
・まだ改良の必要な作品です。利便性を考えFMのワイヤレスマイクを使用していますが、家族の会話が電波に乗るため、防犯・プライバシーの観点からすれば、ワイヤードマイクを利用すべきかと思います(盗聴の危険がある)。
・テレビの音量は快適にミュートされますが、マイクの音声(音量)によっては若干ビリツキが発生する時があるので、レベルの再調整かコンプレッサー回路を追加する等が、検討課題となっています。
・市販品にはより高度な機能のものがあると思いますが、この作品はブロック毎に実績のある回路を使い、そこにちょっと手を加えるだけで製作でき、かつ実用的なものになったと思います。
・ネックスピーカー用として製作しましたが、ミュート付きのミキサーなので、少しの改造で、多用途に活用できるものと思われます。
その他
「ネックスピーカー用ゲイン可変アンプ」の製作にあたり参考としたもの
・洋泉社 大塚明 著 「サウンド・クリエーターのためのエフェクタ製作講座 」製作 #24 Line Level Adjuster 。
・ぺるけさんH.Pの「デジタルソース機器にはLPFを標準装備」記事。
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(メッセージ: デジタルトランジスタ名の追記)
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