概要
フォトリフレクタをパルス駆動してデバイスを保護しつつ強い赤外線を放射し3〜20センチ程度の距離を検出する、双方向ハンドセンサーの核となる技術「スイッチング・フォトリフレクタ(SPR)」。
今回はマイコンなしの全ハードウェア版です。去年の秋頃から研究し始めた新しい分野です。今まではマイコンを使うソフトウェア版を中心に投稿していました。
反応が速く実装しやすいので非接触スイッチなど応用範囲が広いです。細部に注意が必要な超高感度センサーですが認知されていないダークホースの技術です。エレベータや自販機のボタンが非接触になる未来。
動画
動作説明
555タイマーのクロック発生回路と74HC123(74HC423)のモノステーブルマルチバイブレータから赤外線LED駆動パルスを発生させます。周期は約4mS(1〜10mS)、オン時間は約5uS(5〜10us)、状況により周期やオン時間を変えています。
このパルスに同期して赤外線LEDが強く発光します。回路図に示す通り赤外線LEDには電流制限抵抗が無く5VからPchのMOSFETで直接駆動しています。このとき約1.5Aの電流が流れますが赤外線LEDは壊れません。
フォトリフレクタに手をかざした時、フォトトランジスタには赤外線反射光を受けてパルス状の電流が流れます。この電流を抵抗に流し電圧に変換したパルス受光電圧をリセット付きピークホールド回路と非反転増幅回路で連続したアナログ電圧に変換します。
リセット付きピークホールド回路
リセット付きピークホールド回路は新しく考えた回路です。赤外線LED発光の瞬間、反射光のパルスが立ち上がる直前にピークホールド回路のコンデンサをMOSFETでショートしてリセットします。コンデンサの値やダイオードの選定が難しく、LTspiceを駆使して求めました。高速、高性能オペアンプ、TI社のOPA2353を使っています。
LTspiceでは外形のフレーム電圧とフォトトランジスタのパルス電圧の積をBV(ビヘイビア)電圧源から発生させAM変調のような波形を発生させています。波形整形回路は実際の回路図には無くシミュレーションのための回路です。(電源のEXPでも発生できます)
回路図下のMOSFET、2N7002のゲートにはHPF(ハイパスフィルタ)が接続され赤外線LED発光の電圧を利用してピークホールド回路のコンデンサをリセットしています。下のサブサーキットのテキストはライブラリ参照エラーを防ぐためのテクニックです。
フォトリフレクタ
写真が見にくいのでマイコン付き製品の写真にしました。
赤外線LEDは下記のどちらか
1.OED-EL-8L (Digi-Key、MOUSERなど)
2.OSI5FU3A11C (秋月)
1はマイコン付き製品に使っています。買いにくいので秋月のも載せました。
2はばらつきがあります。10個中半分くらいは14センチ以上検出できました。
※アナログなので20センチでも検出しますがマイコン付き版のように発光あり・発光無しの差を取っていないのでS/Nが悪く感度が低く感じます。今後改善するつもりです。
フォトトランジスタ
1.L-31PORT1C (秋月)
マイコン無し版では製品用フォトトランジスタよりこちらのほうがやや性能が良かったのでこちらを使っています。
黒いカバーはアマゾンで売っている塩ビキャップです。赤外線LEDは無しでも良いですがフォトトランジスタには必要です。長さを変えてセンサーの感度調節や太陽光などの光ノイズフィルターとして使います。
「端末保護キャップ 端子カバー 黒丸内径2.5mm、 塩ビ エンドキャップ ゴムキャップ PVCキャップ 柔らかいキャップ」で検索してください。
赤外線LEDの寿命について
この技術は現代の半導体プロセスにおける微細化が前提で昭和では無理でした。動画でサーカスの象と言っていたのはこれです。
静電気などで半導体が壊れるメカニズムは、多くの場合半導体プロセスの欠陥(ディフェクト:歪、傷、クラック、コンタミなど)に雷が落ちるように静電気が流れて破壊します。分子に近い物理的限界までプロセスが細かくなった現代ではこのような欠陥が減り過電流などに対して強くなっています。
微細化プロセスは高性能LSIなどが中心で赤外線LEDが主役ではありませんが、赤外線LEDはリモコンや赤外線レーザーなどで高出力への要望が強いデバイスです。
これは私の考えで、証明されたわけではありませんが、赤外線LEDも昔と比べると強くなっていると思います。絶対最大定格100mAの赤外線LEDに最大1.5A流すマイコン付き製品はライフテストで4年以上性能を維持したまま今日も動作しています。
※OED-EL-8L
終わりに
SFのような3次元インターフェイスが使われている未来を想像して下さい。たぶんそれは赤外線です。音は解像度が低く装置が大きくなるので無理です。電波も装置が大きく複雑になるので難しいです。赤外線を使うフォトリフレクタは1センチ以下のサイズです。低い消費電力で効率が良く面や立体的に展開して使うことができます。
物体の色や材質により反射光が減衰するので距離を正確に測定できませんが、物体を手に限定すると20センチ以下で距離センサーと同様に使うことができます。
一方で、日本の電子機器産業の衰退は明らかです。テレビでさえ利益が出せません。そして回路やさんにとって致命的なのは、技術がICやモジュールなどの部品で実現されるので最新のモジュールを買ってきて配線すればだれでも最新の機器が作れるようになったことです。
これはSFではなく今の世界です。外国では自動運転の自動車が走り、犬型人型ロボットが歩いています。その「世界」で何を創るのか?これをモチベーションにして一人で開発を続けています。
リンク
双方向ハンドセンサー:https://interactive-hand-sensor.com/root/
YouTube 2点式非接触スイッチ:https://youtube.com/shorts/xmqDi4zuShA
X: https://x.com/TakahiroMaeda3
インスタグラム開発履歴:https://www.instagram.com/3duilab/?hl=ja
imgur動画一覧:https://imgur.com/user/3duilab/posts
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