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taichi 2021年02月07日作成 (2022年01月18日更新) © MIT
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ラジ四駆をリブートする

ラジ四駆をリブートする

ラジ四駆の歴史


皆さん、ラジ四駆をご存じでしょうか?
1996年放送開始の「爆走兄弟レッツ&ゴー」が火付け役となった第2次ミニ四駆ブームの終了後、2002年にタミヤ模型がミニ四駆のテコ入れで出した商品です。

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当時、小学生だった私が「ミニ四駆をラジコンで」というラジ四駆の予告を知ったとき、レッツ&ゴーでお馴染みの「いっけぇ!マァグナーム!」→「キュイーン!」が現実になるとワクワクしましたが、いざ仕様を知ると、見事に裏切られました。その理由として

  • 既存のミニ四駆のボディを流用できないラジ四駆専用シャーシ
  • 操作できるのは、アクセルのON、OFFのみ
  • 送信機がデザインがダサい
  • 同時に走行できるのは3台まで

というものです。

上記の仕様を知ったとき、小学生の私でも「タミヤ大丈夫か?」と思ったのを今でも覚えています。
案の定、ラジ四駆はまったく話題にならず、ひっそりと市場から姿を消しました。

ラジ四駆の可能性


2012年あたりから再燃した第三次ミニ四駆ブームが終了しつつある今(私の主観ですが)、私なりにミニ四駆のテコ入れを考えた結果、「ラジ四駆」にたどり着きました(^^;
きっかけとして、とある模型店のミニ四駆コースを観察していると、コースアウトして暴走するミニ四駆を懸命に追いかける大きな子供たちを見て、「ダサい」と思ったことです。ミニ四駆を遠隔操作できれば、下記のメリットがあります。

  • 安全運転をすれば、コースアウトを防げる。
  • コースアウトしても、暴走しない
  • きれいに仕上げたマシンをコースアウトで傷つけることもない

上記のメリットは需要があると思います。

ラジ四駆が登場した20年前と比べると、スマホやドローンの登場で電子部品の性能は飛躍的に向上しており、ラジコンの送受信機周りを1から構築する敷居が下がっているので、ラジ四駆の再開発に挑戦してみました。

ラジ四駆の仕様


がっかりした当時のラジ四駆の仕様を踏まえ、作成するラジ四駆の仕様を挙げます。

  • 既存のボディ、シャーシを流用する。
  • ボディは無加工、シャーシはできるだけ無加工とする。
  • バッテリーは、従来のミニ四駆通り、単三電池2本とする。
  • 送信機は既製品のスマートなものを流用する。
  • 出力の大きいモータ(プラズマダッシュモータを含む)を駆動可能。
  • 出力の調整、ブレーキの調整が可能。
  • 同時に5台以上走行できる。
  • 20m以上離れても操作できる。

上記の仕様を満たせば、子供の頃に夢見た「いっけぇ!マァグナーム!」→「キュイーン!」を再現できそうです。

送信機


ラジコンを気合を入れて操作するするには、手にフィットする洒落た送信機が不可欠です。送信機がダサいと、マシンへの愛着が薄れてしまいます。

ラジ四駆の構想を練っていた当初、送信機側も自作しようかと考えましたが、私の技量で送信機のボディの品質を上げるのは限界があります。

そこで、既存のBluetooth接続のゲームパッドを使うことを思いつきました。Bluetoothであれば、同時に7台程度は同じエリア内で接続可能であり、走行台数の仕様を満たせます。しかしながら、市場に出回っている多くのゲームパッドは室内用を想定されているため、BluetoothのClass2規格が採用されており、通信距離は10m程に制限されています。ラジコンを操作するには心もとないです。

あきらめずに色々なBluetoothゲームパッドを調査した結果、これにたどり着きました。

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Wiiリモコンです。

私の調べでは、Wiiリモコンの接続距離は見通し20mは軽く超えます。もしかしたら、Wiiリモコンは振り回して使われるため、電波強度を強めに設計されているためかもしれません。

通信距離とは別に、Wiiリモコンの良いところは、バッテリーが単三乾電池であることです。昨今のBluetoothゲームパッドは内臓バッテリーであるため、電池の寿命=ゲームパッドの寿命となりますが、Wiiリモコンはその心配がありません。

Wiiリモコンは解析されつくしており、ネット上に情報があるのでデバイスドライバの開発にとても役立ちました。ここがとても参考になります。

受信機兼アンプ基板


ラジ四駆を実現するうえで一番の課題は、車体に載せる受信器とアンプです。
既存のボディを無加工で流用するには、受信機とアンプを一体化し、小型化しなければなりません。
また、既存のシャーシに受信機兼アンプ基板を取り付けたうえで配線を施さなければなりません。

基板の取り付けやすさ+配線の容易さ+ユーザー数の多さを考慮し、下記のシャーシを選択しました。

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みんな大好きMSシャーシです。

MSシャーシは、「MSフレキ」という改造のベース車両として多くのミニ四レーサーに愛されていますが、ラジ四駆への改造もしやすいです。
センターに配置されたモータ直上に、フラットなスペースがあります。キット標準のギヤカバーだと基板の取り付け面が網状になってしまうので、オプションパーツの「MSシャーシ用強化ギヤカバー」を装着してフラットにしました。
そこにマジックテープを取り付け、基板を手軽に脱着できるようにしています。

受信機兼アンプ基板の部品構成はこんな感じです。
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モータドライバ

3Vという低電圧でプラズマダッシュモータ(始動電流25A、無負荷電流1.8A)を駆動できるモータドライバICを見つけられなかったので、FETドライバ+FETとしました。また、部品の実装面積を極力抑えるために、Hブリッジ構成はあきらめ、ハーフブリッジ構成としました。

ハーフブリッジとしたもう一つの理由として、Hブリッジにすればモータの逆回転が可能になりますが、ミニ四駆が逆走できてしまうとミニ四駆らしさが失われる気がしたからです。

Bluetoothモジュール

Wiiリモコンと通信するためには、BluetoothのHCIレイヤを操作する必要があります。手軽に入手するには、パソコンにUSBで接続するタイプの小型のBluetoothアダプタがありますが、ミニ四駆のボディ内空間を考慮すると、スペースの的に厳しいです。
部品制定を進めたところ、UARTでHCIレイヤを操作可能な表面実装のBluetoothモジュールである「RN42HCI」を使用しています。

マイコン

FETドライバへのPWM出力と、UARTの機能があれば十分なので、CPUは「PIC16F1938」を使用しています。
このマイコンはHブリッジをデッドタイム付きでPWM制御できる「ECCP」が搭載されているため便利です。

ソフトウェア


ソフトウェアの機能仕様を簡単に列挙します。

  • 電源投入時に基板のIOピンを短絡すると、リモコン登録モードへ移行する。この後、WiiリモコンのSyncボタンを押下するとペアリングが実行され、ペアリングキーを不揮発性メモリに保存する。
  • ペアリングキーが不揮発性メモリに保存されている場合、Wiiリモコンの任意のボタンを押下するだけで、再接続を可能とする。
  • Bluetoothの電波が弱くなった場合など、Bluetoothの接続が切れた場合は、モータ出力をOFFし、Bluetoothの接続待機へ移行する。
  • Wiiリモコンの本体のみ接続している場合、Bボタンでアクセル100%、Aボタンでブレーキ100%の電圧出力を行う。
  • Wiiリモコンにヌンチャクが装着されている場合、WiiリモコンのA,Bボタンによるアクセル、ブレーキのONOFF操作に加え、ヌンチャクのスティックの傾きに応じてアクセルを0~100%、またはブレーキ0~100%の電圧出力を行う。

全体のクラス図はこんな感じです。

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スロットル、ブレーキのテスト


モーターはハイパーダッシュモーターPROを搭載しました。

ここに動画が表示されます

走行テスト


運よく、家の近くに土日だけ無料でミニ四駆コースを設置している模型店があるので、そこで走らせてみました。

ここに動画が表示されます

まとめ


ラジ四駆を走行させてみて、所感は「ミニ四駆の100倍面白い!」です。
ラジコンでもそうですが、モノを思い通りに操作できるというのは、すごく気持ちの良いことです。ただ走りっぱなしのミニ四駆と異なり。1960年代に流行ったスロットカーのような別次元の面白さを体感できます。

スロットカーはコースから車両に電源を供給するので、コース側の構造が複雑で高価になり、一般家庭には普及しませんでした。しかし、ラジ四駆であればコースは従来のミニ四駆コースを流用できるので、スロットカーほど初期コストはかかりません。ラジ四駆を商品化できれば、スロットカーブームを再度起こせるかもと期待しています。

今回制作したラジ四駆の改良点として

  • 基板形状の最適化
  • シャーシへの取り付け方法の改善(ビス止めが望ましい)
  • MAシャーシ、ARシャーシ、FMAシャーシ等の最新のシャーシへの展開

を考えています。

是非、第四次ミニ四駆ブームを起こすため、「タミヤ模型」様には、現在の技術でラジ四駆を蘇らせてほしいと切に願っています。

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