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airpocket 2021年12月25日作成 (2022年05月19日更新) © CC BY-SA 4+
セットアップや使用方法 セットアップや使用方法 閲覧数 2980
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NE555タイマーIC 50周年記念オブジェ

NE555タイマーIC 50周年記念オブジェ

はじめに

NE555というICはタイマーや発振用に使える便利なICがあります。とても古典的なICで、初心者向けの電子工作部材としてもよくとりあげられています。1972年に発表されてから今日に至るまで使われ続け、来年2022年は発表から50周年にあたります。

とはいいつつ私もNE555を使用した経験がなかったため、発表50周年を記念してNE555を使用したオブジェを制作しました。

NE555PINOUT

完成品

空中配線を使い、NE555の機能をシンプルに表現してみました。

ここに動画が表示されます

プロット

「主役であるNE555にスポットライトをあて、その機能をシンプルかつエレガントに表現したい」というプロットに沿い作るものを検討。
NE555の仕様を調査したところとてもシンプルな回路でON/OFFタイマーを構成できることがわかったため言葉通りNE555をLEDで照らし、LED自体をNE555で制御しようと考えました。かつシンプルな回路自体を空中配線してデザインの一部とし、制御に用いる抵抗とダイオードを交換可能とすることでミニマムなインスタレーションとして機能を表現しました。

NE555を調査

NE555の機能を改めて調査。WikipediaのNE555の記事によると、基本的な回路構成が3タイプあることが判りました。

両安定 (Bistable)モード

両安定モードでは、トリガー(PIN2)にhighを入力すると出力(PIN3)からhighが出力されます。いわゆるバッファIC的に使用できるようですね。

単安定 (Monostable)モード

キャプションを入力できます
単安定モードではトリガーがONになると出力はHighになります。同時にRで電流制限されつつCにチャージされ、Cの電圧が電源電圧の2/3になると出力がLowになって放電ピン(PIN7)からCの電気がディスチャージされるという回路です。RとCの時定数で出力時間をコントロールできるのですね。
highの継続時間は次の計算式で得られます。

t=ln(3)RC1.1RCt = \ln(3) \cdot RC\thickapprox 1.1 RC

無安定 (Astable)モード

キャプションを入力できます
今回の作品では、NE555の機能をフルかつようしている無安定モードを採用しました。
電源がONになると出力がhighになり、R1+R2の抵抗を通ってCにチャージされます。Cの電圧が電源電圧の2/3になると出力がlowになりR2の抵抗を通ってDISからディスチャージされます。電圧が電源電圧の1/3になると再度highになり蓄電されるというサイクルが繰り返されます。
R1、R2、Cを変化させるとサイクルをhigh/lowのサイクルを自由に変えられるのですね。
ただし、R1の選定にはR1の定格電力が次の式より大きくなければならないという制限があります。

Vcc2R1\frac{V_{cc}^2}{R_1}

highとlowの継続時間は次の通りです。

thigh=ln(2)C(R1+2R2)t_{high} = \ln (2) \cdot C \cdot ( R_1 + 2R_2 )

tlow=ln(2)CR2t_{low} = \ln(2) \cdot C \cdot R_2

面倒なことを書きましたが、R1を小さくしすぎないようにしましょう。ということと、high時間はR1 + R2に、low時間はR2に依存するということです。
ただこれだとlow時間よりもhigh時間の短いサイクルは設定できません。high時間を短くしたいときには、充電時にR2をバイパスする回路を付け加えるとhigh時間をR1のみに依存させることができます。R1を制限内で小さく設定し、R2を大きくすると、high時間<low時間となる回路が組めます。
high時間の値は次の式で与えられます。low時間は変わりません。

thigh=R1Cln(2Vcc3VdiodeVcc3Vdiode)t_{high} = R_1 \cdot C \cdot \ln \biggl( \frac{2V_{cc} - 3V_{diode}}{V_{cc} - 3V_{diode}} \biggr)

部品など

・NE555 dip品
 メーカーなどは不明です。初心者向けの工作キットに入っていたものを流用しました。
・抵抗
 LEDの電流制限用に330Ω、タイマー調整用には10kΩを中心に好きな容量の抵抗を使用します。
・コンデンサ
 パスコン用に10nF、タイマー調整用には100μFをの電解コンデンサを使用しました。今回はLEDを0.1~10秒程度のサイクルで点滅させるタイマーを作成するため、電解コンデンサは比較的大きめの容量を選定しています。
・LED
 工作キットに入っていた適当な白色LEDです。
・真鍮線
 VccとGND用にφ0.8の真鍮線を使用しています。本体を支持する目的と、メイン電源ラインであることをイメージして少し太めの線を選定しています。回路部分はφ0.5真鍮線を使用しています。回路部は曲げ加工も多く入るため、加工しやすく剛性も保持でき見た目もすっきりする太さとしてφ0.5が最適でした。
・はんだ
 ヤニ入り鉛はんだを使用しています。空中配線ははんだ付けが難しいため、無鉛はんだでは相当難易度が上がると思われます。
・フラックス
 ヤニ入りはんだでも十分ですが、フラックスがあった方が作業しやすいです。
・ダイソーガラスポット
 展示ケースにダイソーのガラス製ポットを使用しています。フタ部分に回路を固定し、電源を内蔵しています。
・マイクロUSBブレイクアウトボード
 電源供給にUSBケーブル版とボタン電池版を作成しました。USBケーブルから電源供給する場合はブレイクアウトボードを使用します。
・ボタン電池ケース
 ボタン電池版を作成する場合は、CR2032が二個入るタイプのボタン電池ケースを使用しました。
・Dupont Pin femaleコンタクト
 電源ケーブルと真鍮線を接続するのに使用します。Dupont Pinのコンタクトはφ0.8真鍮線にジャストフィットします。
・被覆ケーブル
 マイクロUSBブレイクアウトボードと真鍮線の接続に使います。AWG24ぐらいをちょびっとだけ。ボタン電池ケースはケーブルがついているので不要です。
・マイクロUSBケーブル
 電源供給用に使います。ボタン電池版では不要です。

回路図

作成中です。
無安定モードの回路のR2にバイパス用のダイオード、OUTは330Ω抵抗を通じてLEDに接続します。

組み立て

・PIN1とPIN8にφ0.8の真鍮線をはんだ付けします。突合せは難しいので、少しオーバーラップさせてしっかり固定しましょう。
・残りの回路はカンとセンスでバランスをみながら配置を決めて現物合わせです。直角平行に気を付けて!
・R1,R2,Dはフック上に整形した真鍮線に乗せてセットします。

tips

・空中配線のはんだ付け作業は、ぷるぷる震える手との闘いです。ワークを自由な角度で固定できるクランプや手を載せて固定できる台などを適宜使って、作業しやすい態勢をつくるのがポイントです。
・真鍮線は熱伝導が良いため、はんだ付けに時間をかけているととなりのはんだ付け箇所が溶けてはずれてしまいます。こて温度を高めに設定し短時間ではんだ付け、ずれてしまったりはんだがつきすぎたり、うまくいかないときはすぐ諦めて、一度冷ましてから再挑戦しましょう。
・真鍮線の曲げ作業はラジオペンチでやりました。小さなベンダーみたいなものがあればもっときれいに直角が出せるかもしれません。
・容器はなんでもOK。なるべく見栄えが良くなりそうな容器を探してみましょう。今回使ったダイソーのガラスポットは底面が比較的フラットで、ひっくり返しても展示ケースとして使えます(個体差があって、底面の波うちが激しいものもある)。フタは竹の合成材で、厚みがあり中をくりぬくと電源が仕込める点もgood!!

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