- 前回JFETを使ったヘッドホンアンプの設計シートを公開しました。
- 今回は 25個のトランジスタ を使った フルディスクリートヘッドホンアンプ をユニバーサル基板に配線して製作したので公開しておきます。
Q.JFETってなんやねん
- と...その前に、今回入力部に使ったNチャネルJFET(接合型電界効果トランジスタ)について説明しておきます。
- 最近は 小信号向けのは完全に衰退しかけている ので紹介しておきます。
Pチャネルは 電圧電流特性を反転 させたものとして理解してください。
- 今回紹介するJFETの図記号がこんな感じです。え?矢印そこ??って思われてるかたがいると思いますが、実はドレインとソースの明確な差はありません。
- つまり、物理的にピンを入れ替えてもFETとして動作します。
- ちなみにFETですので、電圧駆動となります。つまり高インピーダンス入力な素子として使うことができます。
- 今回のように入力カップリングコンデンサを省くことができます。
-特性
https://akizukidenshi.com/goodsaffix/2SK880_datasheet_ja_20140301.pdf
- 2SK880のドレイン電流-特性です。みなさんが使われているMOSFETと特性が違う部分があるのにお気づきでしょうか??
- 実はNチャネルにも関わらずを負電圧で制御しているのです。
(Pチャネルは正電圧で制御)
- 実はNチャネルにも関わらずを負電圧で制御しているのです。
- 一般的なNチャネルMOSFETは正電圧で駆動しますが、こちらはそれが 負電圧領域にシフト しています。(Pチャネルは正電圧領域にシフト)
このタイプをデプレション型といいます。実はMOSFETにも存在するので知っておいて損はないと思います。一方でみなさんがよく使われるタイプのMOSFETはエンハンスメント型といいます。
- 一方で、エンハンスメント型MOSFETの2SK2232は0Vより上の正電圧領域で駆動してるのがわかります。
の飽和
https://akizukidenshi.com/goodsaffix/2SK880_datasheet_ja_20140301.pdf
- このグラフにもう一つ疑問は感じませんでしたか?
実は が 未満の 負電圧領域しか描かれていない のがわかります。つまりどういうことかと言いますと、 以上かけてもはそこから増加しません。- つまり でが飽和する ということになります。 のときのをと呼びます。
、つまり ゲートとソースをショート させるとの電流が に関係なく一定 で流れ、定電流ダイオードとして使うことができます。 実は定電流ダイオードは JFETで出来ているのでした。
を克服しパワー化などを実現したのが SIT(静電誘導トランジスタ) で日本で開発されました が、JFETより先に衰退してしまった気がします。。。
- つまり でが飽和する ということになります。 のときのをと呼びます。
回路図
- 入力FETはCPH6904を、出力段BJTにはTTC3710B/TTA1452Bを採用しました。
どちらも新規設計非推奨だったと思います。部品確保にはご注意下さい。CPH6904はMCH5908で置き換えができるかもしれません。- 入力にJFET、出力に大出力用トランジスタにロマンを感じてこの構成になりました。
- また、入力カップリングコンデンサレスのDCアンプになります。直流から増幅が可能です。
- ゲインや部品を変更してパワーアンプにしても良いでしょう!
使用部品
| 部品 | 備考 |
|---|---|
| 抵抗(を除く) | 耐電力: |
| 耐電力: | |
| 多回転半固定抵抗(は一つの半固定抵抗に内蔵) | |
| 多回転半固定抵抗 | |
| CPH6904(とが一つのチップに内蔵) | |
| 2SA1015などの様なPNP小信号低雑音トランジスタ | |
| 2SC1815などの様なNPN小信号低雑音トランジスタ | |
| 〜 程度のNPN中電力用トランジスタ | |
| 〜 程度のPNP中電力用トランジスタ | |
| 数十 台の大電力用トランジスタ(今回はTTC3710B/TTA1452B) | |
| 順方向電圧が 以上のLED | |
| 電解コンデンサ | |
| , | 積層セラミックコンデンサ |
| セラミックコンデンサ | |
| フィルムコンデンサ |
製作
トランジスタのの選別
- まずそれぞれのペアとなるトランジスタ同士のを選別しました。
定電流回路を用意し、コレクタ(あるいはベース)とエミッタ間の電圧を測ります。- コレクタとベースをショートさせてコレクタに電流が流れたときのを測定しています。
大体 ぐらいの差になるようにペア取りしてます。
- コレクタとベースをショートさせてコレクタに電流が流れたときのを測定しています。
- こんな感じで各トランジスタを紙に記載していき、ある程度集まったらペア取りします。
温度でが変化するので、何度か測定しなおしてからペア取りしたほう良いです。
ペア取りをしたうち、のペアは熱結合しましょう。
熱結合
-
ペア取りをしたトランジスタのうち、二段目差動増幅回路用のペアはエポキシボンドでくっつけて熱結合しました。
-
さらに重要なのがあります。出力段バイアス生成用トランジスタを出力段用あるいはにくっつけて必ず熱結合してください。
- これをしないと出力段が熱暴走して火災に至る可能性があります。
配線
- 出力段から配線していきました。割と大変です。
カメラがクソなスマホで撮影したのでピンボケしてますがこんな感じになりました。ちなみにこの状態では動きません。
- 回路の調整が終わって筐体に実装したのがこちらです。ベーク基板の匂いがプンプンします。
あ〜!!ベーク基板の香りィィー!!!
- 裏配線はこんな感じです。
相変わらずのピンボケ具合です。カメラが癖強すぎるんです許して...
発振対策
- +入力に対して、-入力に位相がπずれた信号が入って発振しないように対策を行います。大体位相が遅れてやってくるので、それを減衰させるか進ませるかになります。
- 今回行った発振対策を公開しておきます。
- コンデンサと抵抗(+コイル)を使用します。
発振が止まっても気を抜かず、負荷を繋いだりして本当に安定しているか確かめましょう。また発振状態では特に出力段に過大な電流が流れるため、電源を道連れにして壊す可能性があります。ですので、その状態であれば数秒程度で電源を切りましょう。
抵抗値・静電容量は発振が止まり始めた値から少し多めに余裕を持ったほうがいいと思います。
ちなみに位相補償用コンデンサは全部セラミックコンデンサです。オーディオ向けの超高価な部品は使ってません。
内部補償
- それぞれのコンデンサが、Q1,Q2等で遅れた周波数成分を減衰させるためのバイパスコンデンサになります。
- 大体合計約個分入っています。ここが足りなければ発振します。
ベース抵抗とZobelフィルタ
- トランジスタにもよりますが、大出力向けのだと遅い関係でが無いと発振します。最初はで発振が止まらずでやっと安定しました。
前述の方法で中々発振が止まらないなら、ここの抵抗を増やしてみましょう。 - Zobelフィルタですが、こちらも無いと発振することがありました。今回も挿入しています。
フィードバック部進相コンデンサ1
- ゲインを決定している抵抗にコンデンサを接続します。
- ベース抵抗で高周波成分を減衰させましたが、その分フィードバック信号の位相が遅れてしまいます。
- そこで遅れた位相を取り戻すための進相コンデンサになります。
- ベース抵抗で高周波成分を減衰させましたが、その分フィードバック信号の位相が遅れてしまいます。
ゲート抵抗とフィードバック部進相コンデンサ2
-
は発振防止抵抗です。これが無いと、音量調節可変抵抗を最大もしくは最小にしたときに発振しました。
おそらく配線がアンテナとなってループを形成し発振した可能性があります。- はその抵抗とでループを断ち切るための減衰フィルタ用コンデンサですが、省いても正常に動いています。
-
に並列に接続されたが第二の進相コンデンサになります。
- 先程の遅れた位相をさらに進ませます。
- を増やしても発振が止まらなければこれを挿入します。
今回はを挿入してやっと発振が止まりました。出力段用トランジスタが相当遅いみたいです。
この手法はユニティーゲインアンプの位相補償に使えるのではないでしょうか?
- を増やしても発振が止まらなければこれを挿入します。
- 先程の遅れた位相をさらに進ませます。
調整
- 位相補償を終えたら、アイドリング電流とオフセット電圧を調整します。
先に言っておきますが、アイドリング電流を変化させると出力オフセット電圧が結構変化するので注意です。
できれば
アイドリング電流調整→出力オフセット電圧調整
の順番が良いと思います。
アイドリング電流調整
- まず、電源を入れる前にこの抵抗をになるまで端に回しておきます。
- 次に電源を入れて、,あるいはの両端の電圧を測りながら半固定抵抗をグリグリ回していきます。
- この電圧をその抵抗値で割ったものがアイドリング電流です。
- 自分は にしました。
- この電圧をその抵抗値で割ったものがアイドリング電流です。
このときある可変抵抗が なのに数百以上突然流れたり、
ある点で急激に電流が増加したり、
入力の信号レベル調整用可変抵抗を回したときに電流が急変した場合、発振の可能性があります。
ここにも書いておきますが
出力段バイアス生成用と出力段用あるいはとを必ず熱結合してください。これをしないと出力段が熱暴走して火災に至る可能性があります。
出力オフセット電圧調整
- 一段目に挿入したオフセット用可変抵抗をグリグリ回していきます。
- ある点で出力オフセット電圧が を下回ります。大体それぐらいになればいいと思います。
ただしFETの漏れ電流で音量調整可変抵抗を回すとを上回ることもよくあります。(CPH6904だとそうなりました)
なので妥協して以下になればいいかと思います。
オフセット電圧がずっと電源電圧付近から数台の場合、配線を間違っている可能性があります。
アイドリング電流を変化させると出力オフセット電圧が結構変化するので注意です。
できれば
アイドリング電流調整→出力オフセット電圧調整
の順番が良いと思います。
- ある点で出力オフセット電圧が を下回ります。大体それぐらいになればいいと思います。
出力波形
- 272Hzの矩形波を入れてみました。
- 妙なリンギングやオーバーシュートがほぼ無いですね。
- でも割とノイズが乗ってます。。。もしかしたら発振気味かも??
- それとも熱雑音の可能性もあります。
まぁディスクリートアンプは今まで熱雑音らしきホワイトノイズが結構聞こえた経験が多いので、、、これぐらいは妥協でしょうか。。。
- それとも熱雑音の可能性もあります。
音の評価
- 高域がお化けのように出ます。特に金属音の弾け具合にシビレました。さらにリップ音などもものすごく聞こえて解像度お化けです。2SK2145よりCPH6904のほうが濃密で好きかもしれません。
あぁ〜!!CPH6904の音ォ〜♬
ミュート・過大出力検出回路
- ミュート回路を説明すると、電源投入時・電源オフ時の大きなノイズ を消してくれる回路です。
- このノイズを ポップノイズ と呼び、スピーカーを破壊 する可能性があります。
- 出力の直流成分や大きな電圧を検出しており、これが 過大出力検出回路 です。
- この過大出力電圧は磁性デバイスのスピーカーを 磁気飽和させインピーダンスの低下により、過大電流が流れる ことで スピーカーを破壊 する可能性があります。
最後に
-
カスコードバイアス用LEDがカッコよく光ります。これ感動しますよ、完動だけに・・・w(このあとトド岩に流刑されました)。
-
位相補償は結構苦労しましたね。
- 暴走したせいで途中でバイアス生成トランジスタから閃光が見えて吹き飛びましたよ(えっ?そこ飛ぶ!?!?)。。。
-
次回はこれ用の両電源スイッチング電源が作れたらなぁ〜と思います。
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ログインしてコメントを投稿するお初です
回路図を見ていて少し気になった点があります。
Q13、Q14、Q19、Q20による定電流回路で、複数のカスコード回路の基準電圧を構成しています。単一回路の基準なら問題ないと思いますが、差動4回路(6素子)の基準を受け持つとなると、少し「重い」のではないかと感じました。
定電流回路は本来、出力インピーダンスが高い回路です。そのため各カスコードから流れ込む信号成分によって、基準電圧そのものが振られる可能性はないでしょうか。
カスコードの基準点は、DC的に一定なだけでなく、AC的にも低インピーダンスで動かない方が良いように思います。
そこで上下の基準点にエミッタフォロアを追加し、定電流回路は基準電圧の生成、エミッタフォロアは低インピーダンスでの駆動、と役割を分けると面白そうです。
LTspiceで現回路とエミッタフォロア追加回路の基準点の振れを比較してみたいところです。
こちらこそ、お初です。ご質問ありがとうございます。
そうですね、今回はこの組んだ回路がとりあえず動くのかを確かめたい!!という意味での実験的な要素もあったので、そのあたりのAC特性が雑になった部分はありますね。
一応説明しておくと、確かにトランジスタを4個駆動するのは大変です。ですのでそれらを加味して電流自体を5mA流しています。そしてR9、R11の電圧の振れを減らすためにC7とC8、LEDのVfの変化に対してC14を取り付けました。
今回のカスコード自体、AC特性よりも素子の保護を重視したので、振れの大きさまではそこまで考えてはなかったです。 ただ、ベース電流の変化による振れで実際に発振したことがあったので、その経験からつけたたのがC7とC8、C14(あと一段目のC3)ですね。
あと高密度実装が苦手なので、足の多いトランジスタを減らしたいという意味合いでこういう構成にもなってしまったかと思います。
確かにSpiceシミュレーションと結果が結構違うので、基準電圧の振れを比較するのも面白いですね。
次アンプを作るときにはそのあたりを再考しつつ、ダーリントンカスコード構成などで定電流回路の電流を減しつつAC特性が改善できれば面白いかもしれませんね。