これの続き
Wolfram Engine + Jupyter notebookで回路解析 (Windows) | elchika
https://elchika.com/article/ef587a27-9e1e-4c10-820d-070477c3cb1f/
ラプラス変換はコンピュータで計算できるため非常に便利ではありますが、割と一長一短なところがあります。
コンデンサに電荷が蓄えられている状態を解析するのは微積のほうが楽です。
これは、コンデンサが含まれる回路では電荷に関する微分方程式を解くため、電荷の初期条件を適用するのが容易(というか必須)だからです。
ゆえに、初期条件でコンデンサの電荷が0となっている状態の回路でないと解析は難しいです。
今回はラプラス変換を用いると瞬で解ける例としてフィルタ回路を紹介します。いずれもコンデンサの電荷は初期状態で0とします。
復習ですが、ラプラス変換によるs関数を用いたインピーダンスは次のようになります。
- 抵抗: R
- コイル: sL
- コンデンサ: sC1
Plot [NMaxValue[(50000*2*π*x*Sin[2*π*x*y]-(2*π*x)^2*Cos[2*π*x*y])/(5000000000+2*(2*π*x)^2),y],{x,1,50000}, PlotRange ->{{0,50000},{0,0.5}}]
ゲインは振幅比に対して
G=20log10A
ですから、まずゲインの式を適用します。ゲインは0以下となるのでPlotRangeを{-30,-0}とすると次のようにプロットできます。
Plot[20*Log10[NMaxValue[(50000*2*π*x*Sin[2*π*x*y] - (2*π*x)^2*Cos[2*π*x*y])/(5000000000 + 2*(2*π*x)^2), y]], {x, 1,50000}, PlotRange -> {{0, 50000}, {-30, 0}}]
軸が正方向にしか出ていないのが気持ち悪いのでFrameを適用します。オプションに以下の記述を追加すると次のように出力されます。
Frame -> True
Wolframにはy軸を対数軸とするLogPlotというものが用意されていますが、x軸のみを対数軸とするものは用意されていません。
x軸のみを対数軸とするには、オプションにScalingFunctionsを追加すると解決できます。
ScalingFunctions -> {"Log10", None}
あとはPlotRange を調整して、更に線の色を赤色に変更すると最終的に以下のように出力できます。
Plot[20*Log10[NMaxValue[(50000*2*π*x*Sin[2*π*x*y] - (2*π*x)^2*Cos[2*π*x*y])/(5000000000 + 2*(2*π*x)^2), y]], {x, 1,100000}, PlotRange -> {{1000, 100000}, {-30, 0}}, Frame -> True,ScalingFunctions -> {"Log10", None}, PlotStyle -> Red]
今回はRC, CR, RLフィルタを解析していきますが、その前に"RR"である状態を考えます。
この時、出力される電圧VOUTを考えてみると、分圧抵抗から
VOUT=R1+R2R2VIN
となります。以降のフィルタ回路は全部分圧抵抗と同じ考え方となります。
L[VOUT]=R+sC1sC1L[VIN]=sCR+11L[VIN]
入力電圧VIN=cos(ωt)とすると、
L[VOUT]=L[cos(ωt)]=s2+ω2s
よって、
L[VOUT]=sCR+11s2+ω2s
逆ラプラス変換を行い、
VOUT=ω2C2R2+1cos(ωt)+ωCRsin(ωt)−e−CRt
定常解は
VOUT=ω2C2R2+1cos(ωt)+ωCRsin(ωt)
C=100nF,R=1kΩとして周波数特性をプロットすると次のようにローパスである事がわかる。
カットオフ周波数は
f0=2πCR1=2π×10−7×10001=1592Hz
ちなみにこの回路に直流1Vを入力した場合、すなわち、
L[VOUT]=sCR+11s1
これに逆ラプラス変換をすると、
VOUT=1−e−CRt
と求まり、わざわざ微積を用いなくてもコンデンサの充電時間の目安を簡単に計算できる。
L[VOUT]=R+sC1RL[VIN]=sCR+1sCRL[VIN]
入力電圧VIN=cos(ωt)とすると、
L[VOUT]=L[cos(ωt)]=s2+ω2s
よって、
L[VOUT]=sCR+1sCRs2+ω2s
逆ラプラス変換を行い、
VOUT=ω2C2R2+1ω2C2R2cos(ωt)−ωCRsin(ωt)+e−CRt
定常解は
VOUT=ω2C2R2+1ω2C2R2cos(ωt)−ωCRsin(ωt)
C=100nF,R=1kΩとして周波数特性をプロットすると次のようにハイパスである事がわかる。
カットオフ周波数は
f0=2πCR1=2π×10−7×10001=1592Hz
ちなみに先ほどのローパスRCフィルタと周波数特性をあわせるとこんなかんじになる。
L[VOUT]=R+sLsLL[VIN]
入力電圧VIN=cos(ωt)とすると、
L[VOUT]=L[cos(ωt)]=s2+ω2s
よって、
L[VOUT]=R+sLsLs2+ω2s
逆ラプラス変換を行い、
VOUT=R2+L2ω2L2ω2cos(ωt)−RLωsin(ωt)+R2e−LRt
定常解は
VOUT=R2+L2ω2L2ω2cos(ωt)−RLωsin(ωt)
L=100mH,R=1kΩとして周波数特性をプロットすると次のようにハイパスである事がわかる。
カットオフ周波数は
f0=2πLR=2π×100×10−31000=1592Hz
L=100mH,R=1kΩのハイパスRLフィルタと、C=100nF,R=1kΩのハイパスCRフィルタは殆ど同じ周波数特性を持つ。(実際にプロットして確認してみてください)
ローパスLRも同じような感じで解くので省略。
ちなみにローパスLRフィルタ回路に直流1Vを入力した場合、すなわち、
L[VOUT]=R+sLRs1
これに逆ラプラス変換をすると、
VOUT=1−e−LRt
と求まり、抵抗にかかる電圧は指数関数的に増加する事がわかる。
つまりこういう回路
L[VOUT]=sL+sC1sC1L[VIN]=s2LC+11L[VIN]
入力電圧VIN=cos(ωt)とすると、
L[VOUT]=L[cos(ωt)]=s2+ω2s
よって、
L[VOUT]=s2LC+11s2+ω2s
逆ラプラス変換を行い、
VOUT=LCω2−1cos(√LCt)−cos(ωt)
これはそのまま定常解なのでL=100mH,C=100nFとして周波数特性をプロットすると次のように出力される。
ただしこの回路は自己発振するためきれいな正弦波を出力しません。回路シミュレータで実際に制作してみてください。
共振周波数は
f0=2π√LC1=2π√100×10−3×100×10−91=1592Hz
ちなみにこの回路に直流1Vを入力した場合、すなわち、
L[VOUT]=s2LC+11s1
これに逆ラプラス変換をすると
VOUT=1−cos(√LCt)
周波数はω=√LC1 であるから、例えば50Hzを発振させたい場合はω=2π×50=√LC1 となるようにうまくコンデンサとコイルを選ぶとする。
L=100mH,C=100μFを素子値としてプロットすると、0.2秒の間にほぼ10回振動しているのでほぼ50Hzである事がわかる。
コイルとコンデンサを組み合わせると発振する性質をうまく応用すると、直流から交流を生成できる。
例えば、コイル・コンデンサ・トランジスタを組み合わせたコルピッツ型発振回路というものがあります。
よかったら勉強してみてね。
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sanguisorba
さんが
2021/05/08
に
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をしました。
(メッセージ: 初版)
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sanguisorba
さんが
2021/05/09
に
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をしました。
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sanguisorba
さんが
2022/01/22
に
編集
をしました。
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